ガソリン限界地点

車の運転をする者において常に気になる事、それはガソリンの残量である。
最近の車はガソリンが無くなりそうになると警告ランプが光る。
満タン時は特に気にならないガソリンメーターだが、針が「Ｅ」に近づき警告ランプがつく頃には一躍目視ランキングもバックミラーにせまる程の成長株になるのである。

さて、ガソリン補給のタイミングはいつだろうか？
これは人によって違うと思うが、一般的には警告ランプが着いてからという人が多いと思う。
しゅんちも普段はそうだ。


そう・・・普段なら・・・


しゅんちは車で移動する地方営業マン。
会社の車の給油は指定のスタンドでと決められている。
特定のスタンドと年間で契約しており、年間何割かの割引が受けられる為である。
もし、他のスタンドで給油しようものなら経費削減連呼攻撃を受けてしまう。
不況が続く昨今、経理の血走った目が怖いのでしゅんちも極力指定スタンドで入れるようにしているのだった。

いつものように車で営業に出掛けたしゅんち。
今日はちょっと遠くの地域である。

・・・仕事を一通りこなし帰ろうとした時、給油警告ランプが点灯。
しかし、今いる地には契約スタンドなどない。
スタンドがある地へは高速道路で約１時間・・・果たしてガソリンは持つだろうか？

しゅんちは今までの色々な人のアドバイスを思い出していた。


　・ランプが着いてから１０Ｌくらい余裕がある

　・メモリがＥより下にいかなければ大丈夫


ランプが着きはじめた現在のガソリン残量が、少なく見積もって８Ｌはあるはず。
燃費が１Ｌ辺り１０ｋｍのこの車なので・・・


８Ｌ×１０ｋｍ＝８０ｋｍ　チーン


よしまだいけるよ！

しゅんちは意を決し高速道路に乗った。
そして、給油無しで車を走らせる。


大丈夫・・・大丈夫・・・


心の中でそうつぶやきながら徐々に指定ガソリンスタンドを目指した。

いつもよりかなり頻繁にガソリンメーターをチラチラと見るしゅんち。


ガソリンメータに恋でもしたか？


そして・・・５０分が経過。もうすぐ到着である。
最後の長い下り坂に入った。
ここを下りきり、ＩＣを出ればすぐ指定ガソリンスタンド到着である。
なんとか持ったか・・・？


しかし坂を下り初めて間もなく・・・


道を照らすヘッドライトの明るさもガクッと落ちる。


急に筋力トレーニング器具のごとく重くなるハンドルとブレーキ。


普段見ることのない警告ランプが祭りのごとく全点灯。




もしかして・・・





これがガス欠？


ついにやっちまった・・・・。
道を照らす頼りないライトのごとく絶望感に陥るしゅんち。

車のギアをニュートラルにし、惰性運転のまま坂を降りきり道路の横で緊急停止。
エンジンはかからない。

高速道路で立ち往生。

さて・・・どうしよう？

しゅんちは車内でしばらく考えた。


今出来ることを考えるんだ・・・。


今出来ること・・・・




とりあえず・・・





揺すってみた。

太陽が沈みかけ、寂しさが募りだす夕暮れの車内・・・。


緊急停止をしている車の中で・・・


スーツ姿のサラリーマンが・・・


車内でぴょんぴょん飛び跳ねている。



それもかなり激しく。


・・・そして、
バックトゥーザーフューチャーのマーティのようにハンドルを叩きながら車に懇願するようにしてキーを回すしゅんち。


たのむ！かかってくれ！



かかってくれ！たのむ！



頼む！！



ＪＡＦ呼ぶのイヤなんだ！




すると・・・







ブロロロ・・・






マジかよ。


ちょっと揺すったくらいで本当に動いてしまった車。
おもわずセルフつっこみをするしゅんち。

そして、車は残る力を振り絞りガソリンスタンドを目指し、無事到着。

給油中にしゅんちは色々考えた。
どうやら、ガソリンタンクの出口は車体の後ろ側に付いていて、最後の坂道でガソリンタンクが前に傾いた為ガス欠状態になったのだろうと考えられる。
それにしても、ガス欠というのは走らなくなるだけでなく、車内のあらゆる機能が停止してしまう事を改めて知らされた。

そして給油が終わり明細を渡される。

普段・・・４２Ｌくらいしか入らないガソリンが今回は・・・



５０Ｌ。




入りすぎ。


結果として以下のようのまとめると・・・


　・道路の条件でガソリン残量が変わる為、５Ｌ＝５０ｋｍくらいが限界であるということ。

　・ガス欠をするとブレーキもハンドルもめちゃくちゃ重くなるので事故の危険性がでてしまうこと。

　・それでも万が一ガス欠をしてしまったのならとりあえず揺らしてみる。


これらの事を頭に入れときましょう。


というか・・・そんなことより



ケチらずガソリン入れましょう。