shunchi極楽日記


友情あふれる結婚式

しゅんちには同い年の従兄弟がいる。
彼の名前はコータ
以前極楽日記に登場したヨーゾーの兄である。

関西に住むコータは大阪で1人暮らしをしていた。
言葉は少ないが、時々発する発言が妙に的を得ており周りからは一目置かれた存在である。
極度の面倒くさがりからくる合理主義者でシンプルかつ大胆な性格である。

小さい頃、しゅんちはコータとヨーゾーと3人でよく遊んだ。
3人はかなりのゲーム好きなので親たちに怒鳴られながらもめげずに遊んだ。
1人大人っぽかった兄だけはゲーム好きではなかったのでいつも3人だった。

しかし2人とも関西に住んでいるのでなかなか会えなかった。
しゅんちはその年に数回しかない一緒に遊ぶ機会を指折り楽しみにしていたものである。

昔からコータの行動は奇抜だった。

コップを口につけたまま息を吸い続けたらどうなるか?と実験し、口の周りに真っ青なあざを作ったり。
学食に置いてある醤油の中身をコーラに入れ替えて、さんまなどにそのままかけてしまう人をこっそり覗くといういたずらをしてみたり。
道路を渡るわけでもないのに歩道の際で突然足踏みをし、対向車に急ブレーキをわざと引かせたり。
いつも走っている車道に段差があって、そこを限界スピードで突っ込んだらどうなるか?と、実験し誰もいない真夜中に予想を遥かに上回る大ジャンプのカースタントをしてしまったり。


とにかく伝説が尽きない男であった。


そんなこんなでお互い社会人になり、もうすぐ三十路を迎えようとしている。
しかし、しゅんちと数年ぶりに会ったにもかかわらず真っ先に交わす会話は


しゅんちゃん最近ゲームなにしとん?


「最近仕事どう?」でもなく「結婚生活はどう?」でもなくいきなりこの質問である。
恐らく、しゅんちにそんな社交辞令的なこと聞いても面白くないとわかっているからである。
それがかえってありがたかったりするのだ。

そしてコータは友達が多かった。
友達を大事にし、いつも友達の誘いが絶え間ない感じなのである。
付き合いの良いコータは友達にも人気だったようだ。

そんなコータだが今度、結婚する事になったのだった。


・・結婚式当日


友達の多い彼らしく式も男友達がたくさん出席していた。
しゅんちも友人の結婚式を思い出す。

どうも男友達の結婚式というのは感動するというよりも



妙に面白いのだ。



パイプオルガンの音色と共に白いタキシードで登場するコータ。



プクク・・・


あいつマジやで・・・ぷぷ


クスクス・・・




絶えない友人達の含み笑い。

いつものノリで何かやらかしてくれるんじゃないだろうかと期待する友人達。
しかし、コータは「何がそんなにおかしいん?」という面持ちで終始、苦笑いであった。

そして、結婚式も終わり披露宴が始まる。
やはりここでも友人達の含み笑いが絶えなかった。

司会者「ここで、ご友人様によるスピーチです。」

スピーチする彼はコータの中学時代からの友人で、恐らく親友であるとみた。
彼は冗談交じりのような感じでスピーチを始める。

友人「えー・・・コータ君結婚おめでとう。」

それだけで会場に沸き起こる含み笑い。
なんか既に二次会のような雰囲気である。

友人「スピーチを頼まれまして、何を話せばいいのか考えましたが・・・」

どうやら彼は以前にも誰かのスピーチをしているようだった。

友人「えー前回はちょっと下ネタをしゃべりすぎて会場が引いてしまったので・・・」

おいおい大丈夫か。
明らかにいつもの飲み会のノリである。

友人「今日はマジメに手紙を書いてきました。」

おお〜〜という男友達の歓声が上がる。

友人「・・えー彼は色が黒いので「インド」というあだ名なんです。」

ゲラゲラゲラ・・・

コータは色が黒い事で有名なのである。

友人「今日は、いつものインドって呼び名でいきたいと思います。」

そして友人はゆっくりと手紙を読み出す。


「インドへ」


「インド結婚おめでとう。」


「インドとは中学生の頃からの付き合いですね。」


手紙には中学生の頃の思い出がつづられていた。
仮装大会でキン肉マンをやったときにコータの頭にカレーライスの飾りを乗っけただけでぶっちぎりでカレクックに似ていた事。
一緒にナンパしに街に出かけ、失敗した理由を「おまが暗いから」「おまえが黒すぎるから」と罵りあった事。
そして、下手に成功するよりも反省会のほうが楽しかったことなど会場を笑いの渦に巻き込んでいった。


「あの頃はどちらかというと僕の方がモテていたはずなのに・・・。」


「インドの黒さが薄れ、男前度がアップし、反面僕の髪の毛が抜け落ちていくにつれいつのまにか逆転されてしまいました。」


確かにコータはかなりの男前である。
タイに旅行に行った時に芸能人に間違えられ、現地人に囲まれサインをねだられたという逸話もある。


・・そして手紙は楽しい雰囲気からマジメな雰囲気に変わる。



「ある日、僕はある大事な試験に失敗してしまいました。絶対に合格しなくてはならない試験なのに。」



「あの時の僕は「もう僕には何も残されていない。」「僕はもうだめだ。」と、絶望のどん底でした。」



「そんな時、真っ先に駆けつけてくれたのがインドでした。」



「インドは他に用事があったにもかかわらず、しかも夜中なのにすぐに駆けつけてくれました。」



「そして、何を言うわけでも慰めるわけでもなく、そのままずっと僕のそばにいてくれました。」



「あの時の僕は全てを失った気がしていました。」



「だけど、僕には彼という素晴らしい友人がいると思い知らされました。」



「インド。いつもはなかなか言えなかったけど・・・」





「本当にありがとう。」





「インドがいてくれてよかった。」



しゅんち号泣。


フト、コータを見ると彼は男泣きをしていた。
白いタキシードの袖でボロボロとこぼれ落ちる涙を拭っていた。



「もし、この先インドに何か困ったことがあったら、」



「その時には僕がどこにいても、何をしてても真っ先にそばに行ってやるからな。」





涙で前が見えません。(おすぎ風)


男同士の友情。
普段は冗談交じりだったり、罵りあったりでなかなか素直には話せないものである。
だからこそその手紙に真実の気持ちを感じたのだった。

お世辞も社交辞令も言わない。


本当の言葉・・・


本当の友情がそこにあったのだ。


そんな二人の友情を目の当たりにし涙がこらえられないしゅんちであった。
しゅんちは男泣きをしているコータの姿を涙目で眺めるのだった。

コータ、ユカちゃん結婚おめでとう!
いつまでもお幸せに!
感動をありがとう!


男ってやつはなかなか素直になれない生き物だよね。
だから、いつもは罵りあったり、けなしあったりするんだよね。

でもそんな関係だってわかったからこそ、あの手紙は感動したんだよね。
上辺だけじゃない感じがしてね。

う〜ん。本当、感動したなぁ〜。

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