shunchiの極楽日記


act 111 縄跳び

ある日スポーツ用品店でフト「縄跳び」が目に付いた。
運動不足が懸念される昨今、手軽に運動ができるのではないかと「縄跳び」を衝動買いをするのであった。

「縄跳び」と言うと小学校時代、「跳び箱」「鉄棒」に続く三種の神であった。
この三種目が得意だと一躍クラスの人気者である。
しかし、しゅんちはこの種目は見事に全部苦手。

跳び箱は6段まで。鉄棒は逆上がりがやや怪しい感じ。
そして縄跳びは交差跳びが3〜4回程度が限界。
さえない小学校生活を送った事は言うまでもないだろう。

そんなしゅんちが縄跳びでチャレンジする技は「二重跳び」。
一回のジャンプで二回縄を高速で回して飛ぶ技である。
しゅんちは未だ成功したことのない憧れの技である。
これが連続で出来るとなかなかかっこいいので女の子にもモテモテになるだろう。
ただし小学生の。

早速アパートに帰り、手頃な広い場所はないかと、近所の小学校に歩いて向かう。
そして校庭に到着。

が・・・

校庭では小学生が野球をやっていた。
別に校庭の隅でやっていれば問題ないと思いがちではあるが、いい大人がジャージ姿でなわとび。
しかもヘタクソ。
もしここで縄跳びをすれば、そのうちその中のなわとび名人の子がやってきて

「お兄ちゃんヘタクソだね。僕がお手本みせてあげようか?」

なんて言われた日には恥ずかしくて縄跳びどころではない。

・・・というわけで縄跳びをそそくさと後ろに隠し、別の場所へ移動することにした。

次ぎに向かった場所は近所の公園。
あまり人がいるのを見たことがない。

が・・・

公園のベンチにはマンガを読んでいる小学生。
そしてそのマンガを後ろから数人で覗き込んでいる。
もしここで縄跳びをすれば、そのうちその中の暇な子が近くにやってきて

「マンガよりこの人のなわとびみてた方がおもしれえや。」

なんて言われた日には恥ずかしくて縄跳びどころではない。

・・・というわけで縄跳びをそそくさと後ろに隠し、別の場所へ移動することにした。

次ぎに向かった場所はもう一つの近所の小さな公園。
こちらも人がいるのを見たことがない。

が・・・

公園には小さい子供を二人連れたお父さん。
恐らくせっかくの休みなんだから子供達と遊んでやってと奥さんに家を追いだされたのだろう。
もしここで縄跳びをすれば、そのお父さんが

「ほぉら見てごらん。大きいお兄ちゃんが縄跳びしてるよぉ。上手だから見ててごら・・・・・・・・・・。よ、よし、あっちにいこうかっ。」

と、子供の教育に悪影響を及ぼして縄跳びどころではない。

・・・というわけで縄跳びをそそくさと後ろに隠し、別の場所へ移動することにした。

折角縄跳びをやろうと意気込んでいたのだから諦めるわけにはいかず、アパート近くの人通りの少ない道路でやることにした。
そしてしゅんちは買ってきた水色の縄跳びを広げまずは軽く前回しから跳んでみる。実に十数年ぶりの縄跳びである。

ヒュンヒュンと軽快な音を立て跳び始めるしゅんち。
思ったよりうまく跳べる感じ。
やはり運動能力は小学校の時よりも多少成長しているようだ。

そしてテンポを徐々に上げ、いざ二重回しへ。

ヒュヒュッ ヒュッ ビチィッ!!

痛烈な音と共に腕に激痛が走る。
どうやら、うまく跳べず縄が足に引っかかりその反動で縄がムチのごとく腕を打ちつけたのだった。

「うひぃ!!いってぇえええ〜〜〜!!」

ここへ来てようやく縄跳びが嫌いだった理由を思い出したしゅんち。

小学校の頃、寒い冬の朝、朝礼がはじまる前の15分間縄跳びをしなければならなかった。
嫌々、縄跳びをやると、失敗した時の反動で縄跳びが凍てついた耳を打ちつける。

「あ・・・耳取れた?」

と思うほどの超激痛。
それ以来縄跳びを真面目にやろうという気は起こらなかったのだった。

しかし、小学校当時の柔肌とは違い、今は面の皮も厚くなったはず。
多少の痛みを無視してがんばってみることにした。

しばらくしてようやくコツを掴みかけて来たしゅんち。
どうやら今までは力みすぎていたようで、もっと軽やかにポーンポーンポーンというタイミングで跳べばうまくいくと思い始めていた。

「よし!次こそ・・・!」

・・・とその時、犬の散歩をしているおじさんが近くを通りかかる。
なんとなく気恥ずかしいかったので縄跳びを中断するしゅんち。
やはり、おじさんはしゅんちの姿を物珍しそうにチラチラと見ていた。

「(・・・くっ はやく立ち去ってくれ。今こそコツが掴めそうだったんだ!)」

しかし、おじさんの連れたその犬はしゅんちの近くの草むらで

糞をしはじめた。

否応がなしに立ち止まるおじさん。
なんとなく微笑ましそうな顔でしゅんちを見ているおじさん。
「おじさんもなぁ。昔は「縄跳びケンちゃん」なんて呼ばれてそりゃもう学校じゃ有名な縄跳びマスターだったんだよ。」と言いたそうな顔で。
永遠とも感じられた犬のトイレタイムもようやく終わり、おじさんはやっと立ち去ってくれた。

おじさんがいなくなった事を見計らい、先ほど掴みかけたコツを踏まえてもう一度チャレンジ。

ヒュヒュッ ヒュヒュッ

なんと連続2回に成功!
やはり力まずにテンポよくやったことが成功の鍵だったようだ。
そのあとしゅんちは縄跳びが面白くなり、夢中になって跳び続けた。
こうして、しゅんちは小学校からの苦手種目を一つ克服することが出来たのだった。

なにかを犠牲にした気もするが。


act 112 低空飛行

しゅんちの仕事の得意先で立食パーティが行われた。
その会社の社長や幹部らが勢揃いし、取引のある業者との親睦を深めるという目的のパーティーである。
一応、しゅんちの会社も取引があり招待されていて、担当者であるしゅんちは支店長と一緒にパーティーに参加するのだった。

・・会場に着くと、早速社長からの挨拶や経営方針、今期の業績などの話しがはじまる。
そして、社長からの挨拶が終わると早速パーティー開始である。

一般的にパーティーと言うと華やかで楽しいイメージであるが、いかんせんこの手のパーティーは勝手が違う。
重役幹部と知り合える絶好のチャンスということもあり、会社を売り込もうと会場中で名刺が手裏剣のごとく飛び交うのである。

社長の挨拶の締めのセリフが名刺交換合戦のスタート合図である。
おとなしく話しを聞いていた業者達が一斉に動き出すのである。
しゅんちは支店長に引っ張られるようにしてあちこち挨拶に向かうのだった。

支店長「ややっ Y部長ですね?はじめまして。」

Y部長「おおっ どうもどうもいつもお世話になっております。」

支店長「いやいや、こちらこそいつもお世話になってますよっ わはは」

Y部長「いやいや がはは」

支店長「こちらが御社の担当をさせて頂いてますうちの若い者です。」

しゅんち「えっと・・・はじめまして しゅんちです。」

Y部長「どうもどうもうちの部下がいつもお世話になってますねぇ。」

支店長「いやいや、部長。お世話どころか迷惑ばかりじゃないですか?」

Y部長「いやいや、うちの若い者こそ迷惑かけてるんじゃないでしょうかねぇ。」

支店長「いやいや、そんなことはないですよ。わはは」

Y部長「いやいや、うちの若い者は未熟ですからなぁ。」

支店長「いやいや、滅相もないです。うちの者こそ未熟ですよ。」


Y部長「いやいや がはは」


支店長「いやいや わはは」


Y部長「また、うちの会社に色々情報を教えて頂けるとありがたいですな。」

支店長「もちろん、御社にとってプラスになるような情報をドンドン紹介させて下さい。」

Y部長「まだまだ未熟な会社ですので、皆さんのお力を貸して頂きたいですな。」

支店長「いやいや、未熟なんて、こんな立派なパーティを開いてるじゃないですか。」

Y部長「いやいや、そんなに大した事ないですよ。」

支店長「いやいや、大したものですよ。わはは」


Y部長「いやいや がはは」


支店長「いやいや、わはは」


支店長「いやいや、うちの方こそ御社に色々検討していただいてもらいたいです。」

Y部長「いやいや、うちみたいな弱小企業ですので検討ばかりなんでねぇ・・・。」

支店長「いやいや、弱小企業なんてとんでもない。」

Y部長「いやいや、なかなか御社から製品を買えないんでねぇ。」

支店長「いやいや、検討して頂けることがありがたいことですので。」


Y部長「いやいや がはは」


支店長「いやいや わはは」




Y部長「いやいや がはは」


支店長「いやいや わはは」





あの・・・・







どこまで低く飛ぶんですか?


act 113 愛想の良い店員

しゅんちは会社帰りにガソリンスタンドに寄った。
会社のコネで多少の割引が効くため、いつもこのスタンドと決めていたのだった。
他に比べ安くていいのだが、店員の愛想が悪いというのが一つの難点であった。
しかしほぼ給油しかしないので別に気にならないのだった。

いつものようにスタンドに車を入れるしゅんち。
するといつもと見慣れない店員が駆け寄ってきた。

「いらっしゃいませ〜〜!!」

その店員は金髪に近い茶髪でピアス。短的に言うとヤンキー兄ちゃん。
最近から働きだしたのだろうか?
案外、こういう人の方が愛想がいいものである。

しゅんち「えーっと・・・レギュラー満タンね。」

ヤンキー兄ちゃん「はい!レギュラー満タンですね!」

予想通り愛想の良いヤンキー兄ちゃん。
このガソリンスタンドにとって貴重な存在である。

そして、やたら元気のいいヤンキー兄ちゃんは足取り軽く給油をはじめる。

ヤンキー兄ちゃん「カードお返ししますっ!」

しゅんち「はい、どうも。」

ヤンキー兄ちゃん「仕事帰りッスか?大変ッスね!」

しゅんち「え・・・?ああ、そうだね。」

どうやらこのヤンキー兄ちゃんは世間話が好きらしい。
まるで訪問販売の営業マンのごとくハイテンションで話しかけてくる。

ヤンキー兄ちゃん「サラリーマンッスよねえ?忙しいんでしょうねぇ。」

しゅんち「ん〜 まあ・・・。」

ヤンキー兄ちゃん「この後はやっぱビールっスか?

しゅんち「そ、そうだね。」

あまりに鋭い質問にたじろぐしゅんち。

ヤンキー兄ちゃん「そうっすよね。仕事帰りにはビールっすよね。いいですね。あっ そうだ。灰皿交換しますか?」

しゅんち「あ、ああ・・・俺、たばこ吸わないからいいよ。」

ヤンキー兄ちゃん「ああっ やっぱそうっすよね!両方やったら大変ですもんね!







へ?






摩訶不思議な解釈をするヤンキー兄ちゃん。
お酒とたばこを両方やったら大変という事だろうが何が大変なのか意味がわからない。
しゅんちの頭の上にはクエスチョンマークが3つくらい点灯。

面白そうだったので今度はこっちから話題を振ってみることにした。

しゅんち「最近暖かくなったから働くのも楽になったよね?」

ヤンキー兄ちゃん「あっ えっと、俺この春からここのバイトに入ったばかりなんですよ。最近やっとバイト出来るようになったもので。





へ?






「俺、この春に高校生になったんで。」






ありえねえこの高1。


act 114 選挙カー

選挙の時期がやってきた。
この時期になると街角のあちこちで目に付くのは選挙カー。
選挙カーは結構面白いのである。

「ありがとうございます!鈴木太郎でございます!ありがとうございます!鈴木太郎です!」

名前と感謝の言葉を凄い笑顔で連呼
当の本人よりも同乗している女の人の方が凄まじい勢いである。
白い手袋をはめた手をこれでもかと振りまくり道行く人に「ありがとう」。
それにしても何が「ありがとう」なのかががよくわからない。
もしかしたら「投票してくれるだろうあなたに前もってありがとう」という先回りをしているのだろうか?
用意周到とはこのことだろう。

というか逆を言えば、昼寝なんかしている時は結構やかましいという事もある。
ちり紙交換のおじさんでさえ

「毎度お騒がせしております〜ちり紙交換でございます。」

と言ってるくらいなのだから

「毎度お騒がせしております〜鈴木太郎でございます。」

なんて言ってもバチは当たらないだろう。
但し、アピール度薄。

他に面白い所は、リアクションが良いという点。
こっちから手を振りようものならば。

「あっ!お家の中からご声援ありがとうございます!」

但し、選挙権の持たぬ小学生ばかりにウケてしまうのが痛い。

こんな選挙カーではあるが、政治に関心の薄いしゅんちがいざ投票するとなると聞いたことのない名前よりも聞いたことがある名前を投票してしまうので効果はそれなりにあるのだろう。

そんなある日、しゅんちが営業車で田舎道を走っている前方に選挙カーを見かけた。

「ありがとうございます!田中三郎でございます!ありがとうございます!」

相変わらずのウグイス嬢ような声が畑一面にこだましていた。
畑仕事をしているおばあちゃんがその声を聞き、作業を止め手を振っていた。

「おばあちゃん畑仕事の最中にご声援ありがとうございます!」

そんなやりとりをしながら徐々にしゅんちの営業車に選挙カーが向かってくる。
すると狭い畑道だったためすれ違いが出来ないことに気付く。
そして、しゅんちは先に車を路肩に入れ道を譲ってあげた。



「あっ ありがとうございます!白い車の方譲って頂きありがとうございます!」



違う部分で感謝されてしまった。


act 115 訪問打ち合わせ

しゅんちは仕事でお客さんの会社に呼ばれた。
営業マンであるしゅんちはこうしてお客の会社に訪問し、商談をすることが多いのである。

今回訪れた会社はこじんまりしているものの、社員が全体的に若く、活気があるように思えた。
早速受け付け嬢にあいさつをしするしゅんち。

しゅんち「○○社のしゅんちですが、豊野様とお約束しているのですが。」

受付嬢「おまちしておりましたこちらへどうぞ。」

スリッパに履き替え会社の中へ案内されるしゅんち。
そして、部屋を仕切り板で囲っただけの打ち合わせ室のような所へ案内される。

受付嬢「お座りになってお待ち下さい。」

しゅんちは営業カバンを床に置き、緊張した面持ちで豊野さんが来るのを待っていた。
実は豊野さんとは電話だけで顔は知らない。

・・・しばらく待っていると40代のおじさん風の人が打ち合わせに入ってきた。

しゅんち「あっ どうもこんにちわ。」

反射的に立ち上がりあいさつをするしゅんち。
電話の感じだと豊野さんは若い感じであった。
恐らくこの人は豊野さんではないだろう。


<営業テクニックその1>

「立ち上がりあいさつ」


この時点で名刺を出すのは危険なのである。
こういった仕切り板でしか囲ってないような場所に来るのは本人でない場合がケースがあるのだ。
ただ荷物を取りに来ただけの人。もしくは会社には関係のない出入りの業者。色々な可能性がある。
かといって、向こうがあいさつをするまで放っておくのも危険である。
仮にこのおじさんが社長だった場合、「社長の私を無視するとはなんて無礼なやつだ。」とへそを曲げてしまう可能性もある。
ここで使った「立ち上がりあいさつ」というのはそういった様々なケースを考えての無難な行動なのである。

しゅんち「いつもお世話になっております。」

そう言いながらしゅんちは胸ポケットに入った名刺入れに手をかけた。


<営業テクニックその2>

「名刺出すフリ」


あいさつした相手が素通りせずにその場にとどまった場合、必要なテクニックが「名刺出すフリ」。
相手がもしこちらとの挨拶を臨んでいたのならこの仕草をみせると大抵相手も名刺を出そうとするのである。
ちょうど映画で内ポケットに手を入れ拳銃を出そうとする時の動作に似ている。

おじさん「あ〜どうもどうも。」

そういうとそのおじさんはしゅんちを素通りし、会議室の奥のイスに座りはじめた。
どうも様子がおかしい。


<営業テクニックその3>

「帰り際名刺渡し」


今回の打ち合わせが気になってたまに上司が顔を出すことがある。
自分はでしゃばる気はないと思うのか、名刺交換をしない可能性があるのだ。
こういうときに使う技は「帰り際名刺渡し」。
その上司が部屋を出るときに呼び止め帰り際に名刺を渡すのである。
がっついて今、名刺交換をするよりはスマートである。

そしておじさんと斜向かいに向かい合ったまま沈黙の時が流れた。
すると、次ぎに若い社員が入ってきた。


<営業テクニックその4>

「名刺交換」


若い社員はこういった打ち合わせでは重要であるケースが多い。
おそらくこの人が豊野さんであろう。
よってここは「名刺出すフリ」ではなく名刺を・・・

若い社員「あっ どうも〜。」

素通り。
またもや違ったようである。

そして・・・


その後若い社員が5人入室。



次ぎに女性社員が3人入室。。



そしてその後おじさんが2人入室。



そして更に若い社員が3人。



どれが豊野さん?


打ち合わせ人数のあまりの多さにめまいがするしゅんち。
こんなに人数の多い打ち合わせは初めてである。

すると後から遅れて来た若い人がしゅんちに話しかける。

豊野「あっ すみません しゅんちさんですか?」

しゅんち「は、はい・・・。」


豊野「これからこの部屋で別の会議やるんで別の部屋に来てもらえませんか・・・?」


テクニック意味無かった。


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