shunchi極楽日記


act 160 きちんとした性格

泊まりで出張に来ている。本社の後輩の宮田君とである。
前の日はビジネスホテルに泊まり、朝しゅんちが宮田君の部屋に迎えに行くことになっていた。

今日の集合時間はAM9:00。
ホテルは講習会場から1時間弱かかる所にあり、朝御飯を食べる事を考えても7時頃出れば良いと考えていた。

しゅんち「宮田君ちゃんと起きてるかなぁ・・・。」

しゅんちは跳ね上がった後ろ髪を手でとかしながら宮田君の部屋のドアをノックした。

コンコン・・・

宮田「ガチャッ あっ おはようございます。」

しゅんち「おおっ ちゃんと起きてたねえ。」

宮田「当たり前ッスよ!あはは」

宮田君は既にしっかりスーツを着込みいつものおしゃれなツンツンヘアーもばっちりとセットしてあり、いつでも出掛けられる状態であった。
こうして二人はビジネスホテルを出発し、会場最寄りの駅まで電車で向かうのだった。



ガタンゴトンガタンゴトン・・・



しゅんち「宮田君朝強いの?」

宮田「そうですね。朝は結構強いですねぇ。」

しゅんち「へぇ〜。うらやましいねぇ。俺なんて朝めっちゃ弱いぜ。」

宮田「あっ でも今日寝坊しちゃいましたよ。」




しゅんち「え?」




いくら寝ぼける事の多いしゅんちでもさすがに今朝の記憶はある。

しゅんち「だ、だって、ばっちり用意出来てたじゃん?」

宮田「いやぁ、本当は5時半に起きようと思ってたんですけど、6時になっちゃって・・・。」

ちなみにしゅんちは今朝6時半に起きて、自分でもよく起きれたなと自分を誉めてあげたい気持ちでいた。


しゅんち「ちょ、ちょ、ちょっとまって。寝坊っていうのは約束の時間が7時だったとして、7時過ぎに起きることでしょ?」

宮田「いや違いますよ。起きようと思っていた時間より遅く起きちゃう事が寝坊ですよ。」


それならしゅんちは毎朝寝坊だ。


しゅんち「宮田君さぁ・・・いつもは何時に起きてるの?」

宮田「えーっと、5時半ですね。」

しゅんち「ご・・・5時半!まるでじーさんじゃん!!」


ちなみにしゅんちは毎朝7時50分頃起きている。


しゅんち「会社までどのくらいかかるの?」

宮田「20分くらいですかね?」

しゅんち「うえ!?ならそんなに早く起きなくてもいいじゃん!?」

宮田「いやいや、朝は色々準備したいじゃないですか?」

しゅんち「なんだか乙女チックだなぁ・・・。一体朝何してるん?」

宮田「僕んち朝食は一緒に食べる事になってるんですよ。そんで妹が朝早いんですよね。」

しゅんち「ふむふむ。で、5時半くらいから朝飯ってわけね?でも、飯食っても時間あるじゃん?」

宮田「そんでシャワー浴びるんですよ。」

しゅんち「それらが済んでもまだ6時半くらいじゃない?」

宮田「そっからが大事なんですよ。」

しゅんち「なになに?」



宮田「テレビ見ながらボーっとするんです。」



しゅんち「意味あるのそれ・・・?」

宮田「いやいや、ボーっというのが大事なんですよ。」

しゅんち「ぼー・・・?」

宮田「すぐ出掛けられる格好でボーってのがいいんですよっ!安心ッスよ!」

急に興奮しだす宮田君。
身を乗り出して話しかけてくる。

宮田「しゅんちさんも早く起きてボーっとするべきっすよ〜!!」

しゅんち「う、うん・・・。」


生返事のしゅんち。


しゅんち「じゃ、じゃあさ、突然の予定とか入ったらどうするの?」

宮田「ん?どういうことです?」

しゅんち「例えば・・・準備してないのに急に誘われたとかだと?」



宮田「忙しいって言って断りますね。」


しゅんち「・・・え。すぐ用意すればいいじゃん?」

宮田「だめですよ。ボーっとしてないんすもん。」


ボーってそんなに大事なのか・・・。


人は誰もが自分の感覚が普通だと思っているが、人それぞれ全然違うんだなぁと思ったのだった。


しかし、


自分こそ普通だと思っているしゅんちであった。





え、普通じゃない・・・?(汗)


act 159 紛失物

出掛けようと思ったら財布がなかった。

出掛けるときの恒例行事である。
携帯、財布が出がけに行方不明な事は日常茶飯事なのである。
どうせコタツ布団の脇辺りに・・・




ない。



どうせごちゃごちゃになった荷物に紛れて・・・




ない。



なんだ、洗面台の上に置きっぱなしに・・・




ない。



あはは。そうかそうか、車に置きっぱなしにしちゃったのか。

・・どうせ車の助手席辺りに




ない。


座布団の下にあるに決まっ・・・




ない。


横から座席の下に落ちたかー。




ない。


おやや助手席の下にまで滑りこん・・・




ない。



ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。
ない。ない。ない。ない。ない。ない。ない。



本格的にない。


一気に血の気が引くしゅんち。
どこかで落としたのだろうか・・・?
今日の行動パターンを思い出す。


・・今日は、朝飯と昼飯を買うためにコンビニに行った。
そして、後は家でダラダラと過ごしていた。



それだけだ。


ということは落ちてたとすればコンビニにあるかもしれない。

・・というわけで、コンビニに電話をかけてみるしゅんち。

しゅんち「あっ・・もしもし。すみません。今日は財布の落とし物なんかなかったですか?」

店員「あー、えっと少々お待ち下さい。」




・・・




・・たった数秒ではあったが永遠と思われた待ち時間。



店員「あっ お待たせしました!」

しゅんち「・・・で!どうでした?」



ゴクリ・・・




店員「今日は落とし物はありませんねぇ〜。」


がびーん。


しゅんち「ほ、本当になかったですよね?」

店員「ありませんね〜。」


さらに血の気が引くしゅんち。
徐々に変な汗が額からにじみ出てきた。

ちょっとまて・・・落ち着いて考えるんだ・・・。



<推理中>



「落とした場合」


もし、誰かが拾ったならば拾った人によって次の可能性が考えられる。


<善人の場合>

財布には免許証が入っていたため、免許証記載の電話番号に連絡をとるはず。
しかし、しゅんちのアパートの電話番号は現在使われていないため不在扱いになる。
よって、財布に入った名刺を見て会社に電話をしてくるはず。
今日は日曜日なので月曜日会社に行けば連絡が来る。

そうだ。心配はいらない。きっと明日になれば大丈夫だ。
今日は財布の事は忘れて寝てしま・・・


まてよ・・・

もし拾った人が悪人の場合なら・・・



<悪人の場合>

財布の中身には現金二万円程度入っている。
さらにキャッシュカードとクレジットカードが・・・



クレジットカード!?



クレジットカードは名前を書きさえすればいくらでもクレジットできる。
財布にはおあつらえむきに免許証まで同封されているとう始末。



サインも楽々。



ま、ま、ま、まずい!!
く、くれ、クレジット止めなきゃ!!

とうわけで推理の途中でクレジット会社に電話をかける。

しゅんち「も、もしもし!」

受付「はい。こちら○○クレジット会社、東京支店担当の相宮です。」

長い挨拶がもどかしいしゅんち。

しゅんち「え、えっと。く、クレジットカード停止してほしいんですが!」

受付「はい。紛失されたのですか?」

しゅんち「は、はい!お、落としました!

受付「それでは、お名前、生年月日、それからご住所を正確に教えて下さいますか?」

しゅんち「え、えっと・・・」


お、落ち着け自分。

そう自分に言い聞かせ受付のお姉さんに個人情報を伝える。
そして、停止処理をなんとか行い、さっきから聞きたかった事を聞き出す。

しゅんち「あ、あの・・・今日使われてませんよね?」

受付「はい?ご利用ですか?少々お待ち下さい。」



・・・



・・たった数秒ではあったが永遠と思われた待ち時間。



受付「お待たせしました。」

しゅんち「は、はいはいはい。」

受付「えーっとですねぇ・・・。」




・・・ゴクリ。




受付「先週使われてからありませんでしたね。」

しゅんち「そ、そうですか!よかったぁ・・・。」

受付「それでは停止処理しましたのカードは使えなくなりますので再発行費用として525円かかります。」

・・とりあえず最悪の事態を免れたしゅんち。
クレジットカードの停止処理を終えたしゅんちはさっきの推理の続きをする。


えっと、なんだっけ・・・ああ、これか。


<悪人の場合>

クレジットカードが入っていたにもかかわらず使った痕跡がなかった。
恐らく財布を拾った時点で中身だけ抜いた疑い。
足が付かないようにその後はゴミ箱へポイ。




ゴミ箱へポイ・・・。




ゴミ箱・・・。




・・・。



コンビニのゴミ箱!


しゅんちは先ほどかけたコンビニへリダイヤルをする。


しゅんち「あっ!もしもし。すみません先ほど電話した者ですが・・・。」

店員「あぁ、財布を無くされた方ですね?」

しゅんち「はい!無くした者です!

しゅんちはゴミを探させてくれるよう頼み込む。

店員「えーっと。いいですよ。じゃあ、お待ちしておりますね。」


・・というわけで急いでコンビニへ向かうしゅんち。

コンビニに到着し、さっそく裏のゴミ置き場へと案内される。
ゴミ散策の前に手が汚れないようにゴム手袋を買う。
そして、山積みになったゴミ袋を引っぱり出す。

ゴミは大袋10個近く積まれていた。
どうやら、3時間に1袋の量らしい。
落としたと思われる時刻から逆算すると手前の4袋が怪しい。

さっそく中身を空け手で探る。
酸っぱい異臭が鼻に付く。
レシートを見れば捨てられたゴミの時刻がわかるという事に気付き、朝8時頃のレシートの紛れたゴミ袋を集中的に捜索。

コンビニのゴミのはずなのに教科書やら靴やら色々なゴミが出てくる。

などと関心している場合ではない。探さなくては・・・。



がさごそ・・・



がさごそ・・・



・・・・



ない。


・・結局ゴミからはなんの手がかりもでてこなかった。
手に着けたゴム手袋をそのままゴミ袋に捨て、倉庫にしまうしゅんち。
そして、コンビニのお兄さんにお礼を言いコンビニを後にした。

絶望感が胸に押し寄せて来た。



なぜ朝コンビニから帰って来たとき財布の事を気にかけなかったのだろうか・・・。



なぜもっと早くに財布が無いことに気が付かなかったのか・・・。



なぜこんな時に限って夕方までアパートに引きこもっていたのだろうか・・・。



次々に後悔の念が沸き上がって来た。
しゅんちは髪をかきむしりながらうなだれた。

・・残された手段はあと一つである。
しゅんちは最後の砦「交番」に向かうのだった。

なんとなく交番に向かうというのはバツが悪い。
なにか悪い事をしたのか困った事を起こしたのか。
恐らく駐在している警察官も「今度はどんな困った人かな?」なんて思ってるのだろうか。
しゅんちはバツの悪そうな顔をして交番の扉をガラガラと開いた。

警察官「えーっと。どうされました?」

しゅんち「財布を落としまして・・・。」

警察官「えっとどの辺で落とされたとか心当たりありますか?」

しゅんち「朝、コンビニに行きまして・・・それからアパートに帰りました。」

警察官「それで?」


しゅんち「それだけです・・・。」


警察「え?それだけですか・・・?そ、そうですか。」

あまりの外出時間の短さに驚かれた。

警察官「そ、それではこちらの書類にお書き下さい。」

しゅんちは暗い面持ちで住所氏名年齢を書いていく。

警察官「はい。それではちょっと本部に紛失物について電話で聞いてみますね。ちょっとお待ち下さい。」

しゅんち「はい・・・。」



・・・。



・・たった数秒ではあったが永遠と思われた待ち時間。


警察官「あっ はい。わかりました。ガチャ」

しゅんち「ど・・・どうでした?」



ゴクリ・・。



警察官「えっと本部にも紛失物は出てないそうですね。」

しゅんち「そ、そうですか・・・。」

警察官「それではまた見つかりましたら連絡しますね。」

しゅんち「は、はい・・・。」

警察官「また、車の中から発見したとか見つかった時はすぐ連絡下さいね。」

しゅんち「はい・・・。」

最後の砦もあっさり崩れ落ちた。
・・というわけで何の手がかり出ないまま交番を後にするしゅんち。
現金などどうでもいいからカード類だけは返して欲しい・・・。

しゅんちは帰り道、明日のお金をどうしようか新しい財布をどうしようか免許の再交付をどうしようかキャッシュカードの再発行をどうしようか。
ショックな上に山積みになった仕事の多さに頭が痛くなってきた。
なんだか情けないやらショックやら不安やらで泣きそうになるしゅんち。





「車の中から発見したとか」




さっきの警察官の言葉だ。
確かに誰が聞いても外出時間が短すぎる。
あの警察官は客観的に考えて可能性としては車の中から発見される可能性が一番高いと思ったのだろう。

しゅんち「もう一回だけ探してみよう・・・。」

よく探したつもりだったが念の為、もう一回車の中を探してみることにした。

運転席の座席の下を丹念に探ってみる・・・。




やっぱりない。



助手席の下を丹念に探ってみる・・・。



やっぱりない。



座席を倒して・・・・



倒して・・・



倒・・・




・・・



あったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!(大泣)



手じゃ探れない倒さないと見つからないデットゾーンに財布が挟まっていた。
なんでそんな所に落ちたのかと思わせるミラクルな場所に。
深夜なのでこっそりと駐車場で小躍りしながら財布を胴上げをするしゅんちであった。

・・こうして無事財布を発見しうれし半泣きのしゅんち。
よかった。本当によかった。本当によかった。

こうして無事一件落着・・・





あ。



カード停止しちゃった。



<今回の被害総額>

クレジットカード再発行費・・・525円

ゴミ捜索の為のゴム手袋・・・125円

合計  650円チーン



ま、いいか。見つかったんだし・・・。


<今日の教訓>


「財布」それは・・・


一番落としてはいけないものである。


act 158 言い間違い

会社のパソコンはO氏が管理をしている。
O氏はDOSの頃からパソコンをしていて、社内で一番パソコンの知識が深いということでまかされていたのだった。
かく言うしゅんちもパソコン初心者の頃お世話になったのだった。

そんなある日、会社のパソコンをいじっているとわからない事柄に遭遇した。
困ったしゅんちはO氏に聞いてみることにした。

しゅんち「あの〜すいません・・・。なんかパソコンが変なんですが見てもらえますか?」

O氏「うむ。どれどれ・・・」

そういうと心よくパソコンを見にきてくれたO氏。

O氏「ほうほう・・・そういうことか。あのねしゅんち君いいかい?」

しゅんち「はい。」

O氏「まずここを開いたあとに、この場面で右クイックだ。」




え・・・?



しゅんち「右・・・クックですか?」

O氏「そうだ。右クイックだ。」

しゅんち「へ、へぇ〜右クックですね。」

O氏「そう。右クイック。」

明らかに「クリック」を「クイック」と呼んでいるO氏。
なんとも初歩的なミスなので逆に指摘できない。
できることなら自然に指摘したいところである。

O氏「それからねぇ〜。ここでこれをクイックしてここでダブルクイックだ。」

しゅんち「え・・・?ダブルクックですか?」

O氏「うむそうだ。ダブルクイックだ。」

しゅんち「そうかーダブルクックですね?」

O氏「うん。ダブルクイック。」

しゅんち「あ〜なるほど・・・ダブルクックですね!?」

O氏「そうそう、ダブルクイック。」



だめだ。


もしかしてしゅんちの聞き間違いだろうか・・・?
O氏は舌っ足らずで「ら行」をうまく発音できない人なのかもしれない。

O氏「あーそうだ。わかりやすいようにやり方を文章にして渡してやるよ。」

しゅんち「ありがとうございます。」

そして文章を渡されたしゅんち。



−トラブル対処法−

まず、アイコンを選んだ後フォルダーにドラッグ。
そしてフォルダーを開きアプリケーションを





ダブルクイックする。




確信犯だった。


act157 名前の力


「しゅんち」という名前は限りなく実名に近いハンドルネームである。
いっそ本名を明かしてしまいたいところではあるがシラフになりそうなので今回は実名が「しゅんち」ということで話を進めていく。


「しゅんち」

この名前は母が付けてくれた。

昔は出産前の男女の判別が難しかったのだろうか性別がわからずお腹に居る頃のしゅんちは女の子扱いであった。
母はどうやら女の子が欲しかったらしく、毎日お腹を撫でてはこう名前を呼んでいたという。


「なつこちゃん」




なぜ3月生まれなのに「なつこ」と付けようとしたのか疑問である。



そんなしゅんちは難産で帝王切開で生まれる事になり腹を切って取り出したら付いてる物があるべき場所に付いていた
看護婦さんは麻酔の切れたまだ意識がもうろうとしている母に報告する。


看護婦「おめでとうございます!元気な男の子ですよ〜!」


母「え・・・う、嘘よ!私の子供はなっちゃんだもの!嘘だわ!嘘に決まってるわ!


と、言い張り看護婦さんを困らせたらしい。

というわけでお腹にいる頃から「なつこ」だった男の子の名は全く準備されていなかった。
期待されている長男ならば名前をどうするかで親戚中で大会議が行われるものであるが次男だったということもあったのかその男の子の名前を誰も考えていなかった。

・・結局、母が急遽その男の子にノリで「しゅんち」と命名した。
「しゅん」という響きが良かったという理由らしい。






理由が犬並。



こうしてその場のノリで付けられてしまったしゅんちはその名の通り、

ノリで生きていく人間になってしまった。


こうやって考えてみると名前とは「名は体を表す」とよく言うように、なにかしら力が宿っているのでないかと思ってしまう。
しゅんちという名前も他に色々な力が宿っているのだろうか。


・・ある日しゅんちはスーパーに行き、売場を物色しているとしゅんちと商品棚の細いスペースに子供が割り込んできた。
その子はどうも落ち着きが無く、そわそわしながらしゅんちの見ていた商品を手にとってはちょこまかしていた。
すると後ろの方から怒声が響き渡った。





「こら!しゅんち!そこどきなさい!!」





お、俺か?


・・どうやら、その男の子もしゅんちという名前だったらしい。
その少年しゅんちはお母さんに怒鳴られバツの悪そうな顔をしながら逃げて行った。
そういえば前にも店中をちょろちょろ走り回っていた子供が「しゅん!こっち来なさい!」と怒られていたっけ・・・。


「しゅんち」という名前・・・。





落ち着きのない力が宿る名前なのだろうか?


act 156 デモンストレーション

しゅんちの仕事に装置のデモという仕事がある。
客に装置を見てもらう為に実際に装置を持ち込みデモをするのである。

今回デモをする装置は「検査装置」である。
製品の検査をする装置なのだが、肉眼では確認しずらい傷や汚れが確認できるという代物なのである。

しゅんちはデモ機を持ち客先に向かった。
現場に着き早速装置の組立を始める。
すると、お客がぞろぞろと20人ほどやって来た。
普通は2〜3人くらい集まるものだがそれから考えるとかなりの大人数である。
どうやら珍しい装置だったということもあり口コミであちこちの部署に話が広がったのだろう。
否応が無しに緊張が高まるしゅんち。

・・装置も組上がり準備は整った。

しゅんちは早速装置の説明をはじめた。
かなりの大人数に緊張が走る。

しゅんち「え、え〜こちらの装置は肉眼では確認しずらい傷や汚れを識別する装置なんです。」

一同「ほほう〜。ざわざわ」

しゅんち「特殊なフィルターに光を通してですね・・・かくかくしかじか」

お客さん達は装置の原理を聞きながら頷いたりメモを取っていた。

お客A「あのすみません。このような傷も見えるってことでしょうか?」

しゅんち「えーと・・・。はい。ちょっとやってみましょうか?」

サンプルを預かりセッティングし検査開始。



しかしうまくいかない。



しゅんち「あぁ・・・。このサンプルの材質からすると難しいですねぇ・・・。」

お客A「あらら・・・そうですか残念。」

しゅんち「できれば○○で××なサンプルに適した装置ですので・・・。」

残念そうに声を漏らす一同。
その時数人がパラパラと帰り出す。




まずい。




ここで挽回しなければと焦りはじめるしゅんち。

お客B「それじゃ、これは見えますか?」

しゅんち「えっと・・・これなら見えると思いますよ。」

気を取り直してしゅんちはサンプルを装置にセッティングし、検査開始。



しゅんち「むむ・・・。」



お客B「ごくり・・・。」



しゅんち「ふー。これでどうでしょ?」


そう言いモニターをお客に見せるしゅんち。



お客B「おお〜!ちゃんと見えますね〜!」



一同「おおお〜〜」



その場にいたお客達も歓声を上げる。


お客B「なるほど。こういう風に見えるんですね〜!」

しゅんち「そうですね。大体こんな感じです。」

検査がうまく行き一安心。

かなり得意気のしゅんち。




お客B「あれ・・・?」


しゅんち「どうしました?」













お客B「普通に目で見た方がよく見えるような・・・。」





しゅんち「・・・・。」



お客B「・・・・・。」













デモは失敗に終わった。


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