shunchi極楽日記


雪の結婚式

しゅんちの一つ上の兄が結婚することになった。
相手は6年半付き合った「アコちゃん」。
そんな二人からしゅんちへの依頼があった。


「結婚披露宴の司会をしてほしい。」


結婚披露宴の司会と言うと重要な役割である。
大体、知人や友達に頼むというのが多いが、身内で、更に弟に頼むというのも珍しい。

そんなことよりも、結婚式の司会といえば学級長や生徒会長などを務めた人が似合うポジションである。
しゅんちは学生時代は文化祭実行委員会の副委員長というかなり中途半端な役職しか体験したことがない。
しゅんちに司会を任せるということは野球で例えるならライトで8番を打っていた男にいきなり4番でピッチャーを任せるようなものである。
しかし、兄の期待に応えるべくしゅんちは司会を快く引き受けたのだった。


・・・10月上旬。
しゅんちは結婚式の打ち合わせの為、兄の住む東京に行ったのだった。

兄「じゃあしゅんち。この進行表を見てくれ。」

しゅんち「ふむふむ。まず二人が入場ね。そんで・・・二人の紹介ってのは誰がやるの?」


兄「おまえ。


しゅんち「そっかー両親にやってもらうって案は却下になったのね。んで・・・この祝電は誰が?」


兄「おまえ。


しゅんち「やっぱ俺か。よし、わかった。んで、この二人の半生を振り返るスライドってのは?」


兄「おまえ。


しゅんち「また俺・・・んで、この余興ってのは?」


兄「おまえ。


全部かよ。

なんて弟任せな兄。

しゅんち「ちょ・・・ちょっと俺出番多すぎねぇか!?誰か他にいないのかよ!」

兄「おまえにはさぁ・・・「華」があるんだよ。」

しゅんち「華・・・?」

兄「なんていうか、人を引きつけるこう・・・力ってか魅力ってか くどくどくどくど

すっかり乗せられるしゅんち。
こうしてしゅんちは全部まとめて引き受ける事にしたのだった。

その後、打ち合わせを順調に行い、当日を待つばかりとなったのだった。


・・・11月上旬。
ついに当日の朝がやって来た。
場所は軽井沢。
信州の自然に囲まれて式を挙げるというコンセプトの元、この地が選ばれたのだった。

しゅんちは兄を車に乗せ式場に向かっていた。

しゅんち「兄ちゃん・・・ついに歴史的な朝が来ちゃったね。」

兄「・・・おう。」

しゅんち「緊張してる?」

兄「・・・かなりやばい。」

しゅんち「俺もかなり緊張してきてるけど、気合いをいれようぜ!」

兄「・・・よし!がんばろう!!」

しゅんち「俺は幼稚園の頃の苦い思い出を払拭させる!」


幼稚園の頃の思い出・・・


しゅんちはクリスマス会の最後の挨拶を任された。
しかし、本番になってクラスのいじめっ子にちょっかいを出され舞台の上で泣き出してしまい、会場中に「しゅんちゃんがんばれ」コールをされたにも関わらずとうとう言えなかったという苦い思い出があるのだった。

兄「・・・今日は幼稚園の時とは違うよなおまえ?」

しゅんち「・・あ、当たり前だろ・・・だ、大丈夫だって。」


自信はない。


二人はお互いを励まし合い気合いを入れて式場に向かうのだった。

しゅんち「・・・あれ?兄ちゃんここどこ?

道間違える。
さい先不安なスタートである・・・。

なんとか式場に到着。
しゅんちも式用のスーツに着替え色々と式場のチェックをし始めるのだった。
そうしていると、続々と親戚や友人関係が集まりだした。


従兄弟「ぶははははは!!」

仲の良い従兄弟二人が大爆笑でしゅんちに歩み寄ってきた。
落ち着かずウロウロしているしゅんちがかなりおもしろかったらしい。

しゅんち「なんだよ・・・。」

従兄弟「ぶっははははは めっちゃ緊張してるやんけ!まぁちょっと座りいや。」

しゅんち「ふー・・・マジで緊張してきたよ。」

従兄弟「んで?今日はどんなことしてくれるん?」

しゅんち「どんなこと?」

従兄弟「初っぱなで声が裏返るとか、新郎と新婦を呼び間違えるとか。」


勘弁してくれよ。

不吉な予感を連想させる従兄弟だった・・・。

・・・そして時間が訪れ、式が始まった。

優しい感じの神父さんの前に兄が立っている。
やがて新婦は父親と共に入場。そして新郎に新婦の手を優しく渡すお義父さん。
二人は神父の元で誓いの言葉、指輪の交換。そしてキス。
ちょうどその時、正面のガラスの向こうでは天気が良いというのに雪がやさしく降りはじめていた。

しゅんち母は隣で滝のような鼻水と涙を流し、しゅんち父は阪神が優勝した時以来の涙をにじませていた。

おめでとう!
皆が二人を祝福したのだった。

・・・式も終わりいよいよ披露宴の時が訪れた。
しゅんちは一足先に会場に行き、マイクチェックを行った。
すると皆は続々と披露宴会場に集まってきた。

しゅんちの発声の元、いよいよ披露宴開始である!

しゅんち「それでは皆様。準備の方はよろしいでしょうか?それでは只今より結婚披露宴パーティを開催させて頂きます!」

沸き上がる盛大な拍手。

とにかくおどおどしてはいけない・・・

堂々と堂々と・・・

得意のポーカーフェイスだ・・・がんばれ自分

しゅんち「えー本日司会を務めさせて頂きます新郎の弟のしゅんちです。二人からアットホームな感じの披露宴にしたいという・・・・」

やばい前が見えなくなってきた。
あまりの緊張状態で目の前が真っ白、五里霧中状態。一寸先は白。
自分はこんなに本番に弱かったのか!
予想以上に緊張してしまう自分に不甲斐なさ感じるしゅんちであった。

しゅんち「・・・というわけで皆様どうか手が腫れ上がるほどの盛大な拍手をお願います!それでは!手新郎新婦の入場です!」

そして、二人は盛大の拍手で迎えられながら入場してきた。
スポットライトが照らされ恥ずかしそうに入場する二人。
皆に暖かい拍手で迎えられながら席まで移動し一礼して着席。

しゅんち「えーここで二人の紹介をしたいと思います。まず新郎ですが昭和50年・・・・」

二人の紹介を読むしゅんち。
震えだす声を必死に押さえ何とか読み続けるが、手の震えは止められず両手でマイクを握りしめる。
新人アイドルのマイクの持ち方である。
しかし皆の視線は新郎新婦に向いているので格好はどうでも良い、とにかく声だけに集中だっ!
続いて、ケーキカット、乾杯と順調に進行し、なんとか一段落できた。

少し時間が空いた隙を見計らって緊張をごまかすためビールを呑みに親戚テーブルに駆けつけるしゅんち。

しゅんち「いやぁ・・・すげー緊張しちゃって前が見え・・・」

親戚「いやあ!しゅんちゃんさすがだったね!堂々としてて全然緊張してなかったね!」

しゅんち「え・・・?」

親戚「プロの完璧な冷たい司会とは違って暖かみがあっていいねえぇ〜。」

どうやらポーカーフェイスは大成功だったらしい。
すっかり誉められしゅんち有頂天。

誉められるとすぐに調子に乗るしゅんちは緊張が一気に吹っ飛ぶ。
ちょうどスターを手に入れたスーパーマリオのごとし。
無敵状態に入ったしゅんちはこの後順調に司会を進行していくのだった。

そして、新婦姉のりねえと二人で「二人の生い立ち」をパソコンで作ったスライドで紹介。
その後、二人のなれそめをHP作成で鍛えた技を駆使し面白おかしく作った「shunchi印特製スライド」を発表。
会場は笑いに包まれ、披露宴は一気にヒートアップしていった。

披露宴は大詰め、新婦アコちゃんの手紙読みに入る。
お涙頂戴シーンである。
新郎新婦の両親は会場後ろに整列。
アコちゃんは泣きながら両親へ姉妹へ感謝の言葉。
そして、新郎側の両親へも感謝への言葉。
更に最後に・・・

アコ「今日は・・・司会を務めてくれたしゅんち君。ありがとう・・・。」

やばい。来た。(涙)

そしてクライマックスは二人が生まれたときの体重で作られたテディベアの贈呈。
新郎父の挨拶。そして兄の感謝の挨拶。
会場は感動に包まれていた。

そしていよいよしゅんちの最後のセリフ。
まさに披露宴は最大の山場を迎えていた。
セリフは大方考えていたが、アドリブの方が感動を誘えるだろうと原稿は作らないでおいたのだった。

司会者として皆へのお礼、更に弟として皆への感謝。
二人をこれからも宜しくとお願い。
色々盛り込み、会場の空気を一気に感動の渦に巻き込むつもりである。


しゅんち「えー本日は皆様のおかげで楽しくて暖かい披露宴が出来ました。えー・・・・・





・・・・・






ありがとうございました。」


すっぽり抜けた。
やっぱり原稿書いておけばよかったよ・・・。

こうして、無事披露宴を終えた。
こんな大舞台に馴れていない弟を信じ、全てを任せてくれた兄。
強い兄弟の絆を感じざるを得ないしゅんちであった

兄貴アコちゃん本当におめでとう!
そして感動をありがとう!


人生初の大舞台。
いや〜俺もやればできるもんだねと自信が付いたんだよなぁ〜。

それにしても感動的な結婚式だったよ。
そんな兄もいまや2児の父かぁ・・・。

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