しゅんちが営業で売っている装置は日本製である。
ライバルとなるのは海外メーカーの装置がほとんどである。
今回の仕事も海外メーカーと競合になり、それを打破するために必死に営業をしていくのである。
こういうときはメーカーの営業マンとタイアップしてユーザーに売り込むのである。
今回一緒に仕事をする人「芦沢さん」といって定年近い超ベテランのおじさん営業マンである。
生涯現場主義を貫いており、数々の商戦を勝ち抜いて来たやり手の名物営業マンなのである。
そんなおじさんだけにやたらと説教が好きで、しゅんちはよく捕まるのである。
芦「おい!しゅんち君!わかってんだろうな?ええ!?」
しゅ「は・・はい。」
芦「海外メーカーなんかにやられるんじゃないぞ!ええ!?」
しゅ「そ、そうですね。」
芦「海外製は確かに物は良いのかも知れない。でもな、よく壊れるかもしれないんだぞ?」
芦沢さんはお客に行く前によくこうしてしゅんちに怒鳴りつけるようにして教育をしてくる。
芦「品質は日本製が一番だ!日本人はきちーっと物作りしてるんじゃい!」
しゅ「は、はぁ・・・。」
芦「それに海外メーカーはちゃんとサポートしてくれるのか?ええ!?全然直しになんか来てくれねえぞ!」
しゅ「は、はい・・・。」
芦「海外製なんか買う奴の気が知れん!絶対に国産が一番だ!あぁ!?違うか!?」
しゅ「わ、わかりました!がんばって説得しましょう!」
芦「おまえ人柄が良いだけじゃ物は売れねえんだぞ!?あぁ!?」
しゅ「ヒ〜〜〜!!」
・・こうして芦沢さんとお客さんに向かうのであった。
芦「やっぱりですねーなんといっても国産が一番ですよ。」
客「ははぁ・・・。」
芦「アメリカ辺りは故障が多いですよ。雑なんでしょうかね?車なんかも故障が多いでしょ?」
客「なるほど・・・。」
芦「あっちは土地も広い国じゃないですか。細かいことはどうでもいい感じになるんでしょうな。」
身近な車の話を持ち出し、共感を得る営業術である。
かなり勉強になる。
芦「ただ、ドイツの技術力はすごいと思いますよ。職人の国ですね。寒い国で家にこもって技術を磨いているんですよ。」
客「はぁ・・・なるほど。」
芦「ただ、使い勝手が悪いんですな。職人気質だけに。あの国の政治なんか見てもなんとなく想像できるでしょ?」
客「ほほう。」
徐々に客の心を掴んでいく芦沢さん。
芦「それに比べ日本人は真面目で丁寧ですよ。」
客「確かに・・・。」
芦「狭い島国の民族ですからね。限られた資源の中できちんと丁寧に物を作っているんですよ。本当良い国ですよ日本は。」
客「ですよねぇ。」
芦「だから・・・やっぱり国産が一番って言いたいわけですよ。がはは!」
客「なるほど!わかりました。」
こうして商談を終えたしゅんちは次の客へと向かう。
しゅ「いや〜〜さすがですね。かなり勉強になりましたよ。」
芦「そうかー?営業はこうやって客の心を掴むんだぞ。」
しゅ「なるほどー。」
次の客まで結構時間がかかるようで、雑談をしながら向かう。
世間話で盛り上がる。
芦「うちの車が故障しちゃってさー。」
しゅ「ありゃ・・・結構古いんです?」
芦「修理に出したら結構かかるって言われてよー。参ったよな。」
しゅ「へー・・・どこの車乗ってるんです?」
芦「プジョーなんだけどさ。」
プジョー・・・
peugeot(プジョー)・・・
フランス製です。
説得力無っ。
本末転倒な芦沢さんであった。
いや、身をもって海外メーカーの弱点を経験していたのだろうか・・・。
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