shunchiの極楽旅行記


1月某日

道楽夫婦と近所でも有名なしゅんちの父、母。
この夫婦には毎年恒例行事があった。

「北海道スキー旅行」

この行事はしゅんちがまだ小学生だった頃からはじまった。
子供がインフルエンザにかかり40度近くの高熱を出していようが、子供が骨折をしていていようが、受験があり大変な時期であっても毎年のこの恒例行事が揺らぐことはなかった。
二人にとっては15年ほど続いている伝統行事なのである。

今年も当然のごとく2月に北海道旅行に行くことを決めていた二人。
そんな二人に最近すっかり旅行の楽しみに目覚めたしゅんちは何気なく話しかけた。

しゅんち「今年も北海道行くんでしょ?」

母「もちろんよ。」

しゅんち「いいなぁ〜・・・北海道か・・・。俺も連れてってくれねぇかなぁ〜なんちゃって あはは。」

ほんの出来心。軽い言葉。

・・・のつもりだった。

母「えっ!!あんた本当に行く!!?」

しゅんち「・・・え?」

母「あんた行く気あるの?休みはどうなの?」

かなりノリノリで身を乗り出す母。

母「あんたが有給さえとってくれればいくらでも連れてってあげるわ!」

しゅんち「ま・・・マジで!?」

早速有給とらさせてもらいました。

・・・というわけで、この夫婦の恒例行事に飛び入り参加することになったのだった。


2月某日

しゅんちは旅行の計画を聞きもせずただ参加表明をしたきり当日を迎えてしまう。
仕事も大方終えた夕方、有給を取ることを聞いた課長がしゅんちに話しかける。

課長「しゅんちくんはなんで有給取るんだい?どっか行くのか?」

しゅんち「えっと・・・スキーに行くんですよ・・・。」

不況が続く昨今、有給まで取って北海道スキーツアーに行くことはなんだか気が引けたしゅんち。
北海道に行くとは堂々とは言えなかった。

課長「え?スキー行く為に有給まで取るの?土、日じゃだめなのかい?」

しゅんち「・・・えっと」

課長「遠くにでも行くのかな?」

しゅんち「いやぁ・・・実は北海道に行くんです。」

課長「え!!北海道に行くのかい!!」

思わず大きい声で叫ぶ課長。

すると、その声に反応し会社のみんなが北海道に行くことに対し様々なリアクションをみせる。

先輩「スキーってどこに行くんだい?」

しゅんち「いやぁ・・・親にまかせっきりで全然知らないんですよねぇ・・・。あはは・・・」

北海道好きで特技がスキーのS先輩が身を乗り出して質問をする。

先輩「ニセコかい?それともキロロ?」

しゅんち「んー・・・どこに行くんだろ・・・ニセコってとこかもしれないですね・・・。」

かなり適当。

先輩「どうやって行くんだい?羽田から?」

しゅんち「た・・たぶんそうだと思うんですけど・・・ひょっとしたら名古屋から乗るのかも・・・。」

本当になにも知らないしゅんち。

課長「おいおい。本当に何も知らないんだなぁ〜おい。」

しゅんち「いやぁ・・・本当にどこに行くのかも、何するかもなにも知らないんですよねぇ・・・」

先輩「なんだなんだそりゃ。」

しゅんち「なんだか、ミステリーツアーみたいですよね。あはは・・」

ピリリリリ・・・

その時しゅんちの携帯が鳴り響く。

しゅんち「あっ もしもし?母ちゃん?どした?」

母「んとね、一つ言い忘れてたんだけどね。」

しゅんち「うん?なに?」


母「あんた水着持ってきなさいね。」


しゅんち「み・・・水着!!?」

本当に何しに行くんでしょうか北海道。


AM 2:00〜

会社から帰った後夕飯を軽く済ませ、運転をする事になりそうなので真面目に仮眠をとったしゅんち。
今回もいつものように二人はオデッセイでしゅんちアパートまで迎えに来るという。
そして約束の時刻が訪れ二人はしゅんちアパートにやってきた。
そして、しゅんちの運転で出発するのだった。

しゅんちはハンドルを握りながら後ろでのんびりしている父に質問をした。

しゅんち「んと・・・今回は一体どこに行くんだい?」

改めて考えると凄い質問である。
とても旅行に行こうとしている人の発言ではない。

父「えーっとな、まず羽田空港に向かってるだろ。」

しゅんち「ああ・・・やっぱ羽田だったか。」

父「そんで朝一のフライトで北海道に向かうわけだな。」

しゅんち「えっと・・・今回行くところってニセコ?」

父「いんや。今回はトマムスキー場だ。」

母「あのね。完全にリゾート地になってるから向こうに着いたらずっと施設の中で過ごすのよ。」

しゅんち「ほほう・・・リゾート地ねぇ・・・。」

母「その施設にレストランやら色んな施設やお店が全部揃ってるのよ。」

どうやら二人は北海道のスキー場を全制覇しようとしているらしく、今回はトマムスキー場という訳なのであった。
会社の人に適当に答えてしまったことが悔やまれるしゅんちであった。
次回の旅行は多少の知識を入れておこうと思うのだった。

そして父と交代で運転をし、AM6:00に羽田空港にようやく到着。
車を駐車場に預け空港ロビー内に入る。

ロビーに入り早速荷物を預けるためフロントに向かう。
スキーこそは宅急便で送ったものの、スキー靴は持参している為、一刻も早く身を軽くしたかった。
しゅんちと父は沖縄旅行でナイフを機内に持ち込もうとした母の荷物を厳重チェックしたあと、係員に荷物を預けていった。
今回は無事に済んだらしい。

荷物検査をした後、一行は朝食を取る場所を探すためロビーをウロウロすることにした。
すると空港をウロウロしていると館内放送が鳴り響く。

しゅんち「えっ!・・・あれ、今なんつってた?」

母「ん?なに?」

しゅんち「なんか・・・今変な事を言ってたような・・・。」

軽く聞き流していたしゅんちだが、少し放送に違和感を抱いたのだった。

しゅんち「あ・・・もっかい言うぞ・・・良く聞いてみよう・・・。」


ピンポンパンポ〜ン♪

本日はJALをご利用頂きありがとうございます。

AM7:00フライトの羽田−新千歳便のご連絡をいたします。

現在現地の天候はあいにくの雪です。

天候次第で、場合によって着陸せずに羽田に引き返すことになります。






マジですか。
無事北海道に到着できるよう祈るしかないのであった・・・。


AM 7:00〜

一行は朝食に肉うどん。モーニングコーヒーの代わりにモーニングビールを煽り、酔い酔いでフライトの時刻を待った。
そしてフライトの時刻が訪れいよいよ北海道に向けて出発である。
外はようやく明け始めた薄暗い空に雪がちらついていた。

一行はゲートをくぐり、機内に乗り込みチケットの座席番号をチェック。
どうやら席は機内中央らしい。


母「え〜〜〜!!窓際じゃないの!?」


突然母がわめきだした。

母「あなた私が念を押して窓際とってねって言ったじゃないの!!」

父「う・・うむ?」

母「あなたどーーーして窓際ですか?って確認しなかったのよー!!

父「ううむ・・・。」

母「あーーーもう!折角の旅が台無しだわ!!」

父「う、うるせえな・・・。」

母「確認すればこんなことにはならないわ普通!」





父「あ”あ”?(ブチッ)」





逆ギレ。
こんな怖い顔近年見たことないっス。

しゅんち「ま・・・まあ、母ちゃんもその辺にし・・・」

母「もしこれが私じゃなかったらもっともっとみんな怒ってるわっ!」

父「あ”あ”?(ブチブチッ)」

しゅんち「ね、ねぇ・・・もういいじゃんね・・・座ろうぜ。ね?」

母「ったく・・ブツブツ。」



しぶしぶ席に座る母。


恐ろしい逆ギレ顔のままドスンと座る父。


オロオロしながらしおらしく座るしゅんち。


しゅんち「ねぇ・・・あんなに逆ギレしてんのによくまあ、あそこまで抵抗できるね・・・。」

母「ん?ああ、逆ギレされた時は顔なんか見なきゃいいのよ。」


母強し。



それにしたって・・・


朝から座席くらいでこんなに夫婦ゲンカは勘弁してくれ。


AM 7:30

雪の影響か多少フライトの時間は遅れたものの無事離陸に成功。
水平飛行に移り機内では飲み物が配られはじめていた。

しゅんち「母ちゃん本取ってくれ。」

しゅんちは普段ハンドバックなど持たないので機内で読もうと思っていた本を母に持ってもらってたのだった。

母「・・ったく、本なんて重いから持って来たくなかったのに・・・。」

しゅんち「俺はどんなときもメディアが必要な体なんだ。メディアがなきゃ生きられないんだ。」

くどくどと講釈をたれ持ってきた本を読み始めるしゅんち。

母「どうせすぐ寝るだけよ。」

持ってきた本は先日従兄弟に借りた「ホワイトアウト」。
数年前話題になった映画の原作である。
ちょうど雪山の話しなので北国に向かうしゅんちにとってぴったりの内容であった。

しゅんちは1ページ目をぺらりとめくり読み始める・・・。


・・・・・・・・



しゅんち「ふー眠くなってきた。」

母「ほらやっぱり言ったとおりね。」



まさか1ページ目でしおりを挟むことになろうとは。

小説が睡眠薬となったしゅんちは速攻で眠りに落ちるのだった。


AM 9:00〜

ドガーーン!!

墜落?

死んだ?

いや着いた。


到着の衝撃と共に目を覚ましたしゅんち。
どうやら新千歳に到着したらしい。
沖縄旅行で兄が「JALの飛行機は着陸時に結構衝撃が大きい」と講釈を垂れていたことを思い出した。

フト横を見ると、母が眠そうな顔をむっくりと起こす。
どうやら窓際に座れず散々文句をたれていた母も爆睡していたらしい。
所詮こんなものである。

一行は飛行機を降り、次はJR電車でトマムまで行く予定。
3人はスキー靴の詰まったまるで登山にでも出掛ける程の大きな荷物を背負い、駅のホームに向かうのだった。


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