しゅんちには3歳下の従兄弟がいる。 彼の名前はヨーゾー。 関西に住む彼は社会人なのだが、サッカーやジムで体を鍛えることが好きである。 好きな食べ物は焼肉。好きな飲み物はフルーツジュース。ビールやアルコールは好まない。 そして、髪を伸ばし茶髪に染め、まるでホストのような風貌で、いわゆる今時のイケメン。 3つ下とはいえ、ビール腹のしゅんちとはかなり違うのである。
ある日、ヨーゾーと一緒に関西の町をドライブした時の事である。 ちなみに今日の車は親から借りた金色のボルボ。 彼の父親もまた派手好きなのである。
ヨーゾー「さっすがボルボやなぁ〜。全然、走りが違うわ。」
しゅんち「だねぇ〜。静かだね。」
サングラスにタンクトップを着た彼は金色のボルボがよく似合っていた。 片手で余裕たっぷり運転する姿は、
まるでヤンキー。
ヨーゾー「せやせや、ラーメン好きのしゅんちゃんにおすすめの店を探しといたんやわ。」
しゅんち「マジで!?」
ヨーゾー「こら絶対うまいって言ってくれると思うわ〜間違いないで。」
中身はやさしい青年である。
金色のボルボは順調に関西の道をど派手に走り続けていた。 すると、目の前に怪しげな車を発見した。
ヨーゾー「うわっ!なんや?前の車!?」
しゅんち「あら・・・。ウインカー出しっぱなしだ。」
右に曲がるわけでもないのにずっとウインカーをつけっぱなしにして走り続けている白い車を発見。
ヨーゾー「あれは危ないで!対面車が曲がると思って突っ込んでしまうで。」
しゅんち「そだねぇ・・・。あれは結構事故の原因らしいよ。」
ヨーゾー「こら教えてやらなあかんな!!」
そういうと速度を上げ、前の車に近づきパッシングをするヨーゾー。
パシッ パシパシッ
ヨーゾー「あれぇえ!?アカン!全っ然気付けへんわ!」
しゅんち「・・・。」
ヨーゾー「おらぁ!気付きぃや!!」
そういうとクラクションを連打するヨーゾー。
パァーン!パパパパァーン!!
その音はかなり迫力があり、今のは間違いなく相手に伝わっただろう。
ヨーゾー「あれぇええ!?うわああ!!まだ気付かへんで!?おかしい!?」
しゅんち「・・・。」
ヨーゾー「こっちを見る素振りもないなぁ・・・よっし!もういっちょ!!」
こうしてクラクション&パッシングを猛烈に連打するヨーゾー。
パァーン!パパパパァーン!!
パシッ パシパシッ
パァーン!パパパパァーン!!
パシッ パシパシッ
変化なし。
ヨーゾー「マ、マジでぇ!?運転手大丈夫やろか!?こうなったら・・・」
ヨーゾーは速度を上げ、前の車を追い越し横につけた。 ボルボの重低音のエンジン音が鳴り響く。
ブオォォ〜〜〜〜ン!!
その時ちょうど信号待ちになり、白い車に横づけするヨーゾー。 そして窓をゆっくりと開ける。
白い車には親子3人乗っていた。
運転手にはお父さん。
助手席にはお母さん。
後ろの席には娘。
お母さんと娘は完全沈黙のままうつむき、固まっている。 窓を開けたヨーゾーに習い、助手席の窓を慌てて開けるお父さん。
ヨーゾー「すんません!」
お父さん「な・・・何か?」
ヨーゾー「ちょっとウインカー付いてまっせ!」
お父さん「へっ・・・ええ!?ああぁ!!!あぁああああ!!!すみませんすみませんすみませんすみません!!」
平謝りのお父さん。
無言のまま必死にぺこぺこ頭を下げるお母さん。
後ろで依然完全沈黙の娘。
そしてヨーゾーは軽やかに手を挙げ、にこやかに挨拶をすませるとど派手なエンジン音を高鳴らせ先に行くのだった。
ヨーゾー「いやぁ〜〜!気付いてよかったなぁ〜!」
しゅんち「・・・。」
ヨーゾー「ええことしたわ。ホンマに!」
しゅんち「・・・。」
ヨーゾー「しっかし、鈍いおじさんやったなぁ〜。全然気付かへんかったもんな。」
しゅんち「かなりビビってたと思うよ・・・。」
ヨーゾー「えええ!?そんなわけないやろ。」
しゅんち「おじさんの謝り方・・・必死だったな・・・。」
ヨーゾー「そらないって!俺ってめっちゃええ人やん?ビビんのおかしいて。」
ヨーゾーは本当にいい人である。
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