shunchi極楽日記



act 311
「雪の日の事故」

しゅんちの実家は自営業である。
しゅんちは時々、土日に駆り出され無理矢理働かされるのである。
決まり文句はこうである。
「農家の場合は家族全員で強制的に稲刈りをやるものだ」と言われ丸め込まれるのである。



しかし、兄は一度も駆り出される事はない。



駆り出されるのはしゅんち限定である。

・・3月は1年で一番忙しい時期らしく、しゅんちは文句の余地も無く呼び出された。
しゅんちの仕事内容は主に配達である。
地図を見せられ現場に向かうという運転さえ出来れば誰でもできる簡単な仕事である。

3月某日・・
いつもの決まり文句で呼び出されたしゅんちは実家の手伝いをさせられた。
愛車に乗り、あくびをしながら配達に向かうしゅんちであった。


せっかくの休日なのになぁ・・・。


そんな事をボケーッと考えながら運転するしゅんち。
外は3月なのにチラホラとが降り始めていた。


地球温暖化のくせにこの時期に降るとはなぁ・・・。


しゅんちの車はちょうど長野大橋に差し掛かった。
日曜日の昼間らしく道路はにわかに混み始めていた。


結構降りが強くなってきたなぁ・・・。


と、思った矢先・・・


やべっ!前の車!!


思った以上に近距離に前方の車が接近していた。
予想以上に渋滞して車が詰まっていたようである。


ブレーキィィィィィィィ〜〜ィィィ〜〜ィィ!!


焦ったのか思わず急ブレーキをするしゅんち。


しかし、一向にスピードが下がらない・・・!



「橋の上は凍りやすい。」



一瞬脳裏にある人の言葉を思い出した。


あいにくこの車にはABSという高級な機能は備わっていない。

こういう場合は急ブレーキはご法度である。
返ってタイヤがロックしてしまい滑りやすいのである。
しかし、その判断はとっさにはできなかった。
車はブレーキを踏めども全くスピードを落とさない。



うわぁあああああああああああああ〜〜〜〜!!








ガシャッーーン!!





午前11:58 事故発生
場所:長野大橋中心付近



ありえない距離まで近づいている前方の車。
盛り上がっているしゅんちの車のボンネット。

しゅんちは雪の中上着も着ないで外に飛び出した。
もちろん前の車の様子を見に行くためである。


しゅ「す、すみません!!だ、大丈夫ですか!?」


運転席に座ったおじさんが痛そうな顔をしている。


男「・・・ってぇ〜・・・ちょっと一体どうしちゃったのぉ?ええ?」


ヒゲ面のドスのきいたおじさんであった。
や、やばい・・・。

しゅ「す、すみません!!なんか滑っちゃって・・・。」

ぶつかった車は7人乗りのファミリーカー。
家族4人が乗っていた。

しゅ「か、家族の皆さんは大丈夫ですか?」

男「・・おーい!お前ら大丈夫か〜?」

母、娘2人はどうやら大丈夫らしくおとなしくうなずく。

しゅ「と、とにかく警察を呼びます!」

しゅんちはそういうと警察に電話した。
全く落ち着かず雪が降りしきる中、外でウロウロとするしゅんち。
すると運転席に座っていたヒゲのおじさんも降りてきた。

おじさん「いや、渋滞しちゃったねぇ〜。」

腕組みし、しゅんちが起こした事故のせいで渋滞してしまっている車を眺めている。

しゅ「あ、あの・・・寒いと思うのでどうか車の方に・・・」

おじさん「今日何してたの?」

しゅ「あ・・・いや、実家の手伝いを・・・」

おじさん「あっそう・・・こんな事故しちゃって大変だったね〜。」

しゅ「す、すみません!大事な休みの日に・・・。」

おじさん「ま〜あんまり心配すんなよ。」

しゅ「へ?」

おじさん「俺はこう見えても怪しいもんじゃないからさ。

しゅ「は・・・はい。」

おじさん「悪いようにはしないって。心配すんな。」

なんとなく気になる発言である・・・。

・・しばらくして警察が到着。
どうして事故してしまったのか簡単に調書を取られる。

・・事故の相手は前川さんといって工事がらみの仕事をしている人らしい。
今日は家族4人で買い物に行く途中だったらしい。

警「で、そちらの方は怪我とかないの?」

前川「いやー、家族とか大丈夫なんだけど、俺はちょっと首が痛かったんだよな。」

警「病院行かれます?」

前川「あーはい。この後、みんなで行ってきますわ。」

警「で、お兄さんは?」

しゅ「い、いや、ぼ、僕は全然大丈夫です。」

警「んーじゃあ、とりあえず物損扱いにしとくかな?」

どうやら、事故には「物損事故」と「人身事故」と二種類あるらしい。
相手に怪我無い場合は物損扱いになる。要するに物が破損しただけの事故という意味である。
その場合は簡単で、保険会社が介入し相手の車をこちらの保険で直して示談するというパターンがほとんどなのである。
警察も事故証明を取るだけのシンプルなものである。
逆に人身事故になると話はややこしくなる。
罰則や罰金や慰謝料などが絡んでくるのだ。
今回の場合、相手の怪我大したことなさそうなので物損で済みそうである。

警「じゃあ、人身に変更する場合はまた警察に届出してね。」

そういうと長野県警の皆様はパトカーに乗って帰って行った。

前川「じゃあ、この後みんなで病院に行ってくるわ。それから決めようか。」

しゅ「は、はい。」

前川「まあ、兄さん。あんまり心配しなさんな。じゃあ!」

そういうとしゅんちに凹まされたファミリカーに乗って去っていく前川さん。
ぺこぺこと頭を下げながら相手の車を見送るしゅんち。

そして、派手に凹んだ愛車に乗り、凹んだ気持ちで帰路に着くしゅんちであった。


・・実家に帰ると血相を変えた母、同情+呆れ顔の父、半泣きのタカコに迎えられる。
とりあえず体が無事でよかったと座らされた。
そして、事故の状況を事細かに説明するのだった。

・・・

父「まあ〜雪の日の橋ってのはかなり気をつけなくちゃいけねえんだけどな。」

母「手伝わせてたからちょっと責任感じちゃうわねぇ〜・・・。」

しゅ「いやいや・・・俺がボーっとしてたからさ・・・。」

タ「でもさ・・・ちょっと気になるよね。」

しゅ「何が?」

タ「相手の「怪しいもんじゃないからさ。悪いようにはしないって。」ってセリフさ・・・。」

しゅ「う、うん・・・俺もひっかかってたんだよねそのセリフ。」

母「相手の方どんな人だったの?」

しゅ「・・確かにヒゲの強面系なんだけど・・・。いい人そうだったけどな。」

タ「そう・・・。」

母「まあ、あんたはこの後すぐにでも菓子折り持って謝りに行きなさい。とにかく誠意を見せなさい。」

しゅ「う、うん。」

母「実際の事務処理は保険屋が全部やってくれるし、心配しなくても大丈夫よ。」

しゅ「そ、そうだね・・・。」

と、その時しゅんちの携帯が鳴る。
相手の保険屋だろうか。

しゅ「あっ・・・もしもし?」

男「あーしゅんちさんの携帯ですか?」

しゅ「は、はい。そ、そうです。」


男「先ほど事故の時の前川です。」


本人からの連絡である。


しゅ「あ、あ、あ!!さ、先ほどはす、すみませんでした!」

前川「今、病院にいるんだけどね、家族は大丈夫だったんだ。」

しゅ「あ!そ、そうですか!よ、よかった・・・。」

前川「でもさ、俺の首がちょっと気になるんだわ。」

しゅ「え・・い、痛みますか?」

前川「んー・・・ちょっと気になる程度だよ。」

しゅ「す、すみません!」

前川「いや、もうそんなに謝らなくていいよ。でさ、今日担当医が非番らしくてちゃんとした検査できねーらしいんだ。」

しゅ「そ、そうですか・・・。」

前川「また月曜日に来てくれってんでそれからだと思うんだよね。」

しゅ「わ、わかりました・・・。」

前川「また連絡するわ。」

しゅ「あ、は、はい!失礼しまーす!」

ピッ・・・

母「・・保険屋さん?」

しゅ「ほ、本人・・・。」



母「えっ?」


・・・・


母「普通、あんまり本人から連絡してこないわよね・・・。」


・・・


いつもは楽しいはずの実家の居間に不穏な空気が流れていた。
しゅんちの脳裏には



「怪しいもんじゃないからさ。悪いようにはしないって。」



あの時の前川さんのセリフがグルグルと回っていた。


・・そして翌日


あまり眠れないまま月曜の朝を迎える。
普段の月曜の朝でさえ最悪なのに今日はよりいっそう最悪な朝である。

いつもどおり平静を装い出社する。
そしていつもどおり仕事をこなしていると10:00頃に電話が鳴る。


前川さんだ!


しゅ「も、もしもし?」

前川「あ?しゅんち君?俺だけど。今朝病院行ったんだよね。」

しゅ「あ!す、すみません!で、どうでした?」

前川「いやー思ったより悪くてさ。肩が肉離れしちゃってるらしいんだ。」


か・・・肩が肉離れ・・・。


前川「昨日の夜中に痛み出してさ、やっぱり結構悪いみたいなんだよね。」


恐れていた事が起こり始めていた。


しゅ「・・・で、医者の診断ではどんな感じでしょうか・・・?」

前川「どうもさ・・・全治3週間らしいんだよね。」



全治3週間・・・



前川「でさ、ちょっとしゅんちさんとさ直接話ししたいんだわ。」

しゅ「へ・・・?」

前川「今度俺の家に来てくんないかな?いつ来れる?」

しゅ「え・・・あ・・・え・・・?」

前川「こういう事は早く済ませちゃった方がいいと思うんだよな。」

しゅ「そ・・・そうですね・・・。」

そして今度の土曜日に会うことになったのだった。




どうなっちゃうの俺・・・?



つづく・・・


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