shunchi極楽日記



act 312
「示談交渉」

事故してしまったしゅんちは相手の前川さんと示談交渉をする事になってしまった。。
何をどうしたらよいのかさっぱりわからず、とりあえず保険屋さんを家に呼び相談する事にした。

ピンポーン・・・

保「あ〜どうもこんばんわ〜。」

しゅ「よ、宜しくお願いします・・・。」

いつもは煙たいはずの保険屋さんが今日は妙に頼もしく思えた。
居間に通し、普段は出さないお茶を出してもてなした。

保「この度は不運でしたねぇ・・・。」

しゅ「は、はい・・・。で、実はですね・・・」

しゅんちは前川さんとのやりとりを事細かに説明した。

しゅ「ということで家に呼ばれてしまってるんですよ・・・。」

保「一応ですね、こちらに非がある場合は相手の意向を聞くってのがルールなんですね。」

しゅ「そ、そうなんですか?」

保「相手の方が示談にしたいといえば意向は聞かないと。」

しゅ「そ、そういうもんなんですか・・・。」

保「でも、例えば・・・」

しゅ「た、例えば・・・?」

保険屋さんは一瞬言うのをためらったがゆっくりと話を続けた。


ゴクリ・・・


保「・・あっちの方が「そちら方面の方」であった場合・・・」


そういうと保険屋は頬に傷を付けるゼスチャーをした。
背筋がゾッとするしゅんち。



保「多額の金額を請求してきた場合ですね。」



そう。


それが一番恐れている事である。

保「こちらは安易に示談を了承しなきゃいいわけです。」

しゅ「はあ・・・。」

保「私は保険で全てやりますんで。示談しません。と拒否すればいいんです。」

しゅ「そ、そうですよね。」

保「こういう時のトラブルでは曖昧にしておくというというのが一番危険なんです。」

しゅ「なるほど・・・。」

物損から人身に切り替えるのにも期限があって、早めの決断が必要なのである。
とりあえず小額で示談する方向で話しておき、なんだかんだと長引かせ人身に切り替え不能にする。
そして後から次々に請求をするケースがあるという。
これが一番恐るべきことなのである。

保「でも気になるのが全治3週間の診断書ですね。」

しゅ「は、はい・・・?」

保「今回の場合は間違いなく免停ですね。」


しゅ「め、免停!?」


予想してなかった単語に面食らうしゅんち。

保「今回の事故をざっと点数計算すると・・・。」



<今回の事故>

・・しゅんちの不注意で一方的に事故を起こした。


■安全義務違反・・・2点


・・相手の怪我が全治3週間。


■一方的な原因で15日以上30日未満の軽度の事故・・・6点



合計 8点



免停確定。チーン



しゅ「ま・・・マジですか・・・?」

保「場合によっては20万円以下の罰金の可能性もあります。」

しゅ「そ・・・そんなぁ・・・。」

保「今回はですね。しゅんちさんに100%過失があったという事故になってしまうので、こちらが有利になることなどありません。」

しゅ「な、なんで相手は示談しようと言ってきたんでしょうか・・・?」

保「んー・・・それが私にもわからないんですよね。」

しゅ「なんででしょう・・・。」

保「本当に稀なケースですね・・・。」

しゅんちの頭の中にはよからぬ想像ばかりが膨らむ。

保「今は物損扱いですので、示談した場合は今後の病院代なんかはしゅんちさんが負担することになります。」

現段階では今回の事故は物損事故扱いになっており、病院にかかわった費用は全て自費になるのである。
これを人身事故に切り替えた場合は全ての費用が保険対応になるというのだが、気になるのがしゅんちの罰則である。
しゅんちは車で外回りする営業マンである。免停は致命的である。

保「今回はしゅんちさんの過失による事故です。相手に怪我まで負わせてしまったわけです。」

しゅ「は、はい・・・。」

保「私は罰則を受けても保険を使ってきっちり治してもらうのが良いと・・・私は思います。」

しゅ「は、はい・・・。」

保「ただ、相手が示談しようと言ってるので、条件次第では示談でもいいと思います。」

しゅ「条件しだい?」

保「相手の怪我の具合ですね。どれくらい悪そうなのか。」

しゅ「怪我の具合・・・。」

保「怪我が長引いてお互い険悪になるというケースが多々あります。」

しゅ「はい・・・。」

保「怪我が長引きそうな場合は真っ先に「保険使います」と言い切って下さい。」



重要ポイントは「相手の怪我の具合」である。



・・こうして、保険屋さんと打ち合わせし、示談日に備えるのであった。
しゅんちとしては仕事で交渉をしたことがあるものの、これほどまでに気の重い交渉は初めてであった。

・・示談日当日。
菓子折りを持ち、震える指でチャイムを鳴らした。


ピンポーン・・・


女の子「どちら様ですか・・・?」

小学生の女の子が出てきた。

しゅ「あ、あの・・・しゅんちですけど、お父さんいらっしゃいますか?」

女の子「おとーさーーん!しゅんちさんって人が来たよーー!」

そしてスウェット姿の前川さんが玄関にやってきた。
首にギブスをはめている様子はなかった。
怪我は大したことないのだろうか・・・?



重要ポイントは「相手の怪我の具合」である。



前川「あーどうもどうも。まあ、上がって。」

しゅ「この度はすみませんでした・・・。」

前川「まーいいからいいから上がってよ。」

しゅんちは居間に通された。
周りを見ると勉強机やおもちゃが部屋の隅に見えた。
かなり家庭的な・・・庶民的なイメージである。

前川「しゅんちさんコーヒーでいいかい?」

しゅ「いやいやいや!!ぜんぜんお構いなくっ!」

前川「じゃーいいか・・・まあ、座ってよ。」

しゅ「し、失礼します!」

前川「いーよいーよ正座なんかしなくて、くずしてくれや。」

しゅ「いやいやいや!これでいいんです!」

前川「じゃあ・・・早速だけどさ・・・」

そういうと医者の診断書を出す前川さん。
そこには確かに「肩肉離れ 全治3週間」と書かれている。

前川「まー最初は大したことないと思ったんだけどさ。夜に痛んでねぇ・・・。」

しゅ「す、すみません・・・。」

前川「もともと俺さ、肩が弱かったんだよな。それでだと思うんだわ。」

しゅ「そうだったんですか・・・。」

前川さんは元々五十肩を患っており、事故の衝撃で悪化してしまったという。
思った以上に怪我が重かった理由にはそれがあったのだった。

前川「で、俺も色々調べたんだけどさ。」

前川さんは独自に色々調べたらしく、怪我の具合が3週間の場合の罰金と罰則。
しゅんちの行く末がどうなっていくのかを知っていた。

前川「見たところしゅんちさんって営業マンでしょ?車使うでしょ?」

しゅ「は、はい・・・実は、毎日運転する仕事です・・・。」

前川「罰金とかはもちろんさ、免停は気の毒だと思うんだよな。」

しゅ「い、いやぁ・・・」

前川「俺がこの診断書を警察に出しちゃったらしゅんちさんは免停になっちゃうわけだ。」

しゅ「そうですね・・・。」

前川「だから俺はこれを警察には出さないつもりなんだ。」

しゅ「そうですか・・・。」

前川「で、俺も病院行った費用だったり、家族との休日が台無しになっちゃったりと・・・まあ慰謝料的なものも含めてさ・・・」

しゅ「そうですね・・・。」

前川「仮にしゅんちさんの罰金を考えたらこれだけ頂ければそれでチャラにしようかと思ってるんだ。」

前川さんはスッとしゅんちの前に手書きのメモを差し出す。
恐る恐るメモを覗き込むしゅんち。



ゴクリ・・・




請求額 5万円



しゅ「うぇえええ!!?こ、これはちょっと安すぎませんか?」

前川「そ、そうかな?まあ、でも俺はこれだけ貰えりゃいいんだけどさ。」

その時保険屋との打ち合わせの内容を思い出した。




「相手の怪我の具合によっては示談してもいいです。」





重要ポイントは「相手の怪我の具合」である。




しゅ「で・・・肩の具合はどうなんですか?」

前川「え?これか?」



バシッ!!




へ・・?



前川さんはまるで江戸っ子のように肩をバシバシ叩きだした・・・!


前川「まだ本調子ってわけじゃないんだけどさ。」


バシッバシッバシッバシッ!!


ちょちょっちょっちょまっ・・・ちょっとぉぉーー!!まっまちょちょまっままままぁーーー!!


怪我がこれ以上悪化しては状況が悪くなってしまうのである。

前川「まー俺も家族いるし、これからも食わせてかなきゃいけない大事な体だからな。」

しゅ「は、は、はい・・・。」

前川「この肩の治療だけはしゅんちさんの保険で引き続きお願いしようと思うよ。」



しゅ「え?」



前川「あれ・・?ダメなの?」

しゅ「・・いや、実は人身事故にしないと保険っておりないんです。」

前川「えええぇぇええ!?

どうやら前川さんは保険のシステムまでは理解していなかったらしい。
物損扱いのままだと保険から治療費は一切、おりないのである。

前川「いやぁ・・・それは知らなかった・・・。」

しゅ「そ、そうなんです・・・。」

前川「それは困ったなぁ・・・。」

しゅ「ですから・・・僕としては・・・」


この状況を判断し、覚悟を決めるしゅんち。


しゅ「じ、人身扱いになったとしても保険でちゃんと対応したいんです・・・。」


前川「で、でも・・・免停になっちゃうぜ?」

しゅ「ぼ、僕は・・そ、それだけの事をしてしまったんです。当然の報いです・・・。」

前川「そうか・・・」

前川さんは物思いにふけるようにぼんやりと外を眺めた。

そして・・・


前川「この肩がなー!この肩さえなかったらなー!」


バシッバシッバシッバシッバシッ!!


ちょちょっちょっちょまっ・・・ちょっとぉぉーー!!ちょちょちょちょちょちょちょちょっーー!まっちょっまちょーーー!!!おぉぉいいぃぃーーー!!ぃいいーーー!!



前川「じゃあ・・・警察にコレ出しちゃうけど・・・いいね?」

しゅ「は、はい・・・。」

前川「なんだか・・・かえって悪いことしちゃったねぇ・・・いやーうまくいかないもんだ。」

しゅ「は、はい・・・すみませんでした。」

前川「まあ、俺もいつ逆の立場になるかわからんしな。」

しゅ「はい・・・。ありがとうございました・・・。」

前川「俺もしゅんちさんもお互いが今回を教訓にしてこれからの運転を気をつけていこう。」

前川さんは正真正銘にいい人であった。
楽しい休日に後ろからしゅんちにぶつけられ怪我を負わされ、休日を棒に振った上に愛車も傷つけられた。
それなのに、見ず知らずのしゅんちの事を心配して色々考えてくれたのだった。

しゅんちといえば自分の立場ばかりを考えていた。
しかも相手を疑ったりして人として恥ずかしいと思った。
暖かい人情に触れ反省すると共に他人の優しさにありがたく思うのだった。
前川さんには謝っても謝りきれない気持ちでいっぱいであった。

・・そして数日後、警察から電話があり「人身事故」に切り替えるため、現場検証が再び行われた。
人身事故として事件性はないかどうか、どのようにしてぶつかったのか、どうしてボーっとしてしまったのかなどこと細かく行われた。
前川さん仕事を休んで出てきているというのに、なぜか申し訳なさそうな顔をしていた。
そして、しゅんちにがんばれよと暖かい視線を投げかけてくれた。


そして更に数日後・・・




しゅんち宅に免許停止を告げるハガキが届いた。



つづく・・・

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