shunchi極楽日記



act 315
「納車」

先にこちらをご覧下さい。act 314新車購入

母「あんた、どんな車にしたんだっけ?」

しゅ「カローラフィールダーだよ。」

母「へぇ〜。いいじゃない。」

父「ま、良い選択だったかもな。」

昨日は長野(市)で会社の宴会があり、実家に泊まったしゅんち。
今日は神奈川県に住む兄の家に遊びに行く予定であった。

しゅんちは会社の営業車に皆を乗せ、松本に向かっていた。
信平自動車の社長との打ち合わせ通り、新車が松本支店に納車されているからである。
ちなみに長野から松本までは高速で1時間ちょっとである。

母「で、色は何色なのよ。」

しゅ「黒だよ。」

母「黒は汚れが目立つわよ〜。」

車の色が「黒」と言うと8割くらいの人が「汚れが目立つよ」と言ってくるものである。

しゅ「いや〜白だとさ、まるで営業車じゃん?」

父「まーそうだな。カローラフィールダーで白は営業車だよな。」

しゅ「赤だとさ、露骨にキムタクじゃん?だから黒にしたん。」

母「確かに黒はかっこいいかも知れないわねぇ。」

父「・・しかし本当に車はあるのかぁ?」

しゅ「だ、大丈夫さ。社長と綿密に打ち合わせしたもん!」

社長は金曜の夕方に会社の駐車場に納車し、銀色のポストに鍵を入れておくと言っていた。
更に万が一、納車ができなかった場合は連絡をするという約束であった。
昨日は特に連絡も無く、無事納車されていると思われた。

・・一行はまだ見ぬ新車を期待しながら松本に到着したのだった。
高速を降り、しゅんちの会社へと向かう。

父「さぁ〜!果たして納車してるかなぁ〜!?」

父がからかうようにしゅんちを煽る。
徐々に会社の駐車場に近づく。
心なしかドキドキしてきた。
駐車場に到着し、皆は身を乗り出して覗き込む。


ついに対面か・・!?


父「おぉ!?ああ!?」

母「黒よね!ああ!あの車?」

しゅ「あった!?」

ほっと胸をなでおろすしゅんち。
早速、車内から車を確認する。


あれ・・・?


小っちゃいなぁ・・・?


父「あれ・・・?おまえのカローラフィールダーだよな?」

しゅ「うん・・・?」


・・・


ボディーにかかれている文字は「ist」




い・・・イストぉ!?



駐車場に止まっていたのは黒のカローラフィールダーではなく黒のイスト。

しゅ「あ・・・これは事務員さんの車だ・・・。」

父「え・・・。」

恐らく、事務員さんは昨日、宴会があるので会社に車を置いて電車で長野に行ったのだろう。
辺りを見回してもイスト以外の車は見当たらない。

ということは・・・?


・・・。



ない。



ない。



ないぃぃぃぃぃぃぃいいいいぃぃぃ!??



一気に青ざめるしゅんち。


1人車を慌てて降り、辺りを見回してみるがカローラフィールダーらしきものはどこにもない。
銀色のポストに走って中をみるが、鍵らしきものもない。
駐車場に止まっている車は黒のイストのみである。


一気にパニックに陥るしゅんち。


しゅんちは信平自動車に電話する。
震える指でボタンがうまく押せない。


プルルル・・・・


事務「はい。信平自動車です。」

しゅ「あ、あ、あの!しゅ、しゅんちですけど!」

事務「あーどうもどうも!社長に代わりますね!」


・・・ピンポロポ〜ン♪


心地良い保留音を聞いていてもまったく落ち着かず、辺りをウロウロするしゅんち。
心配そうに営業車の窓から様子を伺っている3人。

社長「あっもしもしー昨日はどうも〜」

しゅ「しゃ、しゃちょう!!

社長「んーどした?」

のんきな口ぶりの社長。
その口調からは「どう?新車の乗り心地は?」的な雰囲気が感じられた。

しゅ「く、車がないんです!!

社長「えぇ!?」

しゅ「い、いや、あの・・・本当に会社に届けてくれたんですよね!?」

社長「い、いやぁ〜昨日ちゃんと届けておいたんだけどなぁ〜。」

しゅ「だってないんですもん!!」

社長「鍵だって銀色のポストにしっかり入れておいたし・・・。」

しゅ「それもないんですよ!!」

社長「いやぁ〜昨日はレッカーで間違いなく運んどいたよ?」

しゅ「ど、どの辺に置いたんですかぁ!?」

社長「う〜ん正面の駐車場だけど・・・。」

しゅ「ほ、ほ、本当ですか!?」

社長「ちゃんと届けたけどなぁ・・・本社に。





へ?




ほんしゃ?



ほ・・・ほ、ほ、ほ、本社ぁぁぁあ!??



ちなみに長野から松本までは高速で1時間ちょっとである。



しゅ「ええぇええええぇえぇぇ%&$#ぇえ*〜〜〜!!!??」


社長「だって昨日は長野だったんでしょ?」


しゅんちは社長との打ち合わせ内容を思い出す。


−回想シーン−

社長「じゃあさ・・・会社に届けといてやるよ。」

しゅ「え・・・?いいんですか?」

社長「しゅんちさんの会社はよく知ってるしさ、鍵をポストかなんかに入れといてさ。」

しゅ「はいはい!」

−回想終了−



確かこうだったが・・・


もしかして・・・



−回想シーン(真相版)−

社長「じゃあさ・・・会社(長野の本社)に届けといてやるよ。」

しゅ「え・・・?いいんですか?(まあ、近所だし)」

社長「しゅんちさんの会社は(かなり昔からの付き合いで本社も)よく知ってるしさ、鍵を(本社の)ポストかなんかに入れといてさ。」

しゅ「はいはい!(じゃ、松本支店に届けて下さい)」



そういうことかぁあああ!!?



しゅ「うわぁああああああ〜〜〜!!」

父「・・・おい。なにがどうなってんだ?事情を説明しろ。」

車の外で身振り手振りで大暴れしているしゅんち。
その姿を心配してか、父が車を降りてしゅんちに歩み寄ってきた。

しゅ「な・・・長野に置いてあるって・・・。」

父「は・・・?長野?」

しゅ「う、うんうん。」

父「さ、さっきまで居た長野か・・・?」


固まる2人。


父「じゃあ、長野に戻ろう。」


パニックになっているしゅんちを尻目にあっさりと答えを出す父。
たった今、高速1時間かけてここに着いたばかりである。
なかなかすぐには戻るという発想は出来ないものである。
しかし、父のその目は本気であった。

こうして、しゅんち達一行は兄にかなり遅れる事をお詫びし、再び長野へと向かう。
たった今通ってきた道を逆走である。
ショックでフラフラなしゅんち。

父「いや〜・・・思い込みってのは本当危険だな。」

母「しかし、長野まで無料で納車してくれるなんて、普通じゃないわよねぇ。」

しゅ「う・・・うぅぅ・・・。」

母「あんたの会社とよっぽど親密だったのね。」

常識はずれのサービスをしてくれた社長。
往復2時間もかけて、レッカー車で納車してくれるなど想像も出来なかった。
しかもそんな手厚いサービスをさりげなくしてくれた社長。
完全なる善意であるので感謝することはあっても、責めることなどできないと思うのであった。

・・時刻は昼近くなり、母がPAエリアに寄ってなにか食べようと騒ぎだした。
しゅんちとしてはとても食べ物が喉を通る状況ではなく、とにかく車を確認したかった。
しかし母の強烈な権力で姨捨SAに寄らされ、食料を調達した。
タカコは「むしろ笑えるよ」としゅんちを励まし、先ほど買った鯖寿司を運転中のしゅんちの口に運んだ。
さっき見た景色ばかりが通り過ぎながら長野へと向かう。

・・こうして更に1時間かけ長野に到着した。

父「さぁ!果たして納車してるかな!?」

父がしゅんちをからかうように煽る。
デジャブのようなさっき見たシーンである。

本社に到着すると、まるでショールームに置いてあるようなピカピカの車が確かにそこにあった。

父「お!あった!あったあった!」

母「へぇ〜!かっこいいじゃない!!」

しゅ「よ・・・よかったぁ・・・。」

ハンドルの前に突っ伏して安堵するしゅんち。
営業車を降り、ポストに鍵を取りに行き鍵発見で再び安心するしゅんち。
そして運転席へと。

父「おお・・・これはなかなか・・・。高級感あるなぁ。」

母「あたしこっちに乗りたい!」

さて・・・

これで、再び松本支店に営業車を置きにいくわけだが・・・。


あれ・・・?


父「おまえ、どっち運転するんだ?」

営業車は会社の車なので、常識的に社員であるしゅんち以外は運転すべきではない。
ということは・・・




初乗りは父。



しゅ「うわぁあああ〜〜!!」

バックミラーに映る愛車を眺めショックを受けるしゅんち。
運転席に座る派手なサングラス姿の父が妙にしっくりときていた。

しゅ「初乗りがぁあ〜〜!」

タカコ「いーじゃんか。どーして男の人ってそういうことにこだわるかねぇ〜?」

しゅ「ぐぉああああ〜〜」

バックミラーに映る新車の運転席に座る父の姿を見る度に身悶えるしゅんち。
それはまるで買ったばかりの新刊の本の外のビニールをはがした瞬間に他人に読まれるようなものである。

タカコ「どーでもいいじゃんかー。」

しゅ「だ、だってさ、車降りた時に「運転しやすいよ。」とか「乗り心地いいわね。」とか先に言われちゃうんだぜ!うわぁああ〜!

・・こうして、身悶えながら本日3度目の長野自動車道を通り、更に更に1時間かけ松本に到着。

しゅ「あぁ〜・・・たぶん母ちゃんが「良い乗り心地だったわー。」とか言っちゃうんだぜ・・・。」

後から付いてきた母たちも一旦車を停め、新車から降りてきた。
そして開口一番言った台詞・・・



母「いやぁ〜いい女だわ。」



はぁ?


母「ナビのお姉さんの声がいいのよ!いい女だわ!



予想外れました。


しゅんちは営業車を急いで片付けた。
そして・・・ついに新しい愛車に乗り込むのだった。

しゅ「ふー・・・ようやく運転席に座れた。」

しかし、このまますぐに神奈川に向かわなければならなく、落ち着いてあちこちいじる余裕などない。
いきなり出発し、じっくり感動に浸ってる余裕すらなかった。

結局、このトラブルおかげで2時間半もロスした。
再び一行を乗せた新車は高速に乗り急いで東京方面へと向かうのであった。


・・・


母「なんか音楽聴きましょうよ!」

しゅ「えー・・・CDないけど?」

母「えー?ないの?じゃあ、PAでなんか買いましょうよ。」

しゅ「えー!今、欲しいのなんてないぜ。」

母「コブクロとかならいいでしょ!」

しゅ「おお。コブクロならいいね!」

母「よし!私が買ってあげるわ!」

そういうと、母の圧倒的な政治力で再びPAに寄り道させられた。
トイレ休憩やコーヒー休憩を済ましたのち、車に乗り込む。
そして母はCDを買ってきた。

しゅ「なにこれ・・・。」

母「だって、コブクロなかったんだもん。」

母の買ってきたCDは



「稲垣潤一ベスト」。



しゅ「やだよ!初乗りを奪われた上に、初音楽が稲垣潤一なんて!」

母「あんたくだらないわねー!そんなのこだわんなくてもいいじゃない!」

しゅ「・・・じゃ、じゃあ、しょうがないいいよ。」

どうせCDをかけるだけである。減るもんじゃない。

CDをいれ、再生スタート。



チャラララ〜 チャラララ〜♪



ダッダダン♪



クゥ〜〜リィ〜〜スマスキャロルが〜〜♪


な〜がれる頃には〜♪



時期はずれの「クリスマスキャロルの頃には」を聞きながら神奈川県を目指す一行。
すっかりこの車が自分の車とは思えない雰囲気になってきた。

タカコ「ねえねえ、ところでこの赤い丸表示は何?」

ナビをいじっていたタカコが画面を指さす。

しゅ「ん・・・?」





●REC




しゅ「ぐおおおぉおおお!!録音してるぅ〜〜!?」

しゅんちのナビはハードディスクナビである。
入れたCDは自動的に録音されるらしい。

しゅんちは慌ててナビをあちこちいじってみる。
しかし、消し方がさっぱりわからない。

・・こうしてその日以来、消し方を憶えるまで稲垣潤一がBGMとしてエンドレスに流れることになったのだった。

こうして、ドタバタと色々な事が起こりながら、神奈川の兄宅に到着。
兄宅には首を長くして待っていた姪のリト、兄嫁のご両親に迎えられた。

その日の夜はしゅんちは事故をした時から今日の出来事までを身振り手振り半泣きで皆に報告した。
しゅんちとしてはとても笑い事では済まされない出来事のはずだった。
しかしそれとは裏腹に、あまりの白熱極まるその話しっぷりに皆は大爆笑していた。
皮肉にも「あの時のしゅんちはここ最近で一番面白かった」と皆に評価されたのだった。

とにかくその日は疲れ果て良く寝れた。
本当に大変な1日であった。


・・2日後。


まだ乗り馴れない車で通勤しているしゅんち。
いつものように仕事を終えたしゅんちはアパートに帰り、駐車場に車を止めた。
まだ馴れない手付きギアをPに合わせ、サイドブレーキを引きエンジンを止める。

車からはすぐに降りず、車内を後部座席までぐるりとゆっくり見渡す。
ようやくシートベルトを外し、車を降りた後ボタン一つで鍵を掛ける。
ピピッという音と共にハザードが瞬き、車はロックの合図をする。

しゅんちはそのまま立ち尽くす。
そして意味も無く車の周りをゆっくり一周し正面から車を眺めてみる。
しばらくしてから、後ろ髪を引かれる気持ちで何度も振り返りながらアパートへと歩いていく。

本当に新車を買ったんだと実感し、おもわず微笑む。
鍵をギュッと握り締めるとアパートのドアをニヤけながら開けるのであった。

しゅ「ただいま〜!」


おわり


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