shunchi極楽日記


act 350「しゅんちベビー誕生」 

そろそろ出産予定日が近づいてきた。
どうやら、予定日の1ヶ月前から生まれる射程距離に入っているらしい。
しゅんちはいつ大変な事が起こるのではと気が気でない毎日を送っていたのだった。
まるで時限爆弾がいつ爆発するのかハラハラドキドキな気分である。

しかし予定日も過ぎ、1週間程度経過した。

おや?陣痛か?と思いきやトイレだったりと緊迫したムードも無い。
まるで産まれるような気配は無い。

そんなある日の朝・・・

しゅ「あっ おはよう。早いね?」

タカ「ああ・・・おはよう。」

しゅ「どした?」

タカ「んーなんか・・・来てるっぽいのよ。」

しゅ「き・・・来てる!?陣痛か!?

タカ「まあ、まだ弱い感じだけど定期的に来るからそうかも。」

しゅ「ど、ど、ど、ど、どどうしよう。俺、会社休むか?」

タカ「いや〜・・・まだ長くかかりそうだよ。行っておいで。」

しゅ「だ、大丈夫なの?」

タカ「まだまだだよ。大丈夫、」

しゅ「そ、そうか・・・じゃあ、行ってくるけど、緊急事態になったら連絡くれな!」

・・というわけでいつものよう会社に行くしゅんち。
そしてやきもきした気持ちで一日仕事をこなしたのだった。
結局、タカコからの連絡は無かった。
その日は早めに家に帰らせてもらったのだった。

しゅ「た、ただいま!ど、どう?」

タカ「う〜〜〜ん?そんなに痛くないけど、定期的に痛みは来るね。」

しゅ「じ、陣痛か?

タカ「だから、陣痛だって言ってるじゃん(笑)」

しゅ「よ、よし!とりあえずどうするか!?」

タカ「夕飯食べる?」

しゅ「そ、そうするか・・・。」

タカ「そうだねぇ。」

なんとも緊迫感の無い雰囲気。
本当に陣痛なのか怪しい雰囲気である。

こうして、夜中に何かが起こりそうだと思い、10時頃には床に付くしゅんち達であった。


・・・


・・・ちゃん


・・・しゅんちゃん


しゅ「ん・・・んん?」

午前3時。
物々しい雰囲気でタカコに起こされたしゅんち。

タカ「かなり強い痛みが来たよ・・・。」

しゅ「ま、マジで!?」

ここでうろたえてはいけない。
あの時の師長の話を思い出せ・・・!

しゅんちは師長の言葉を反すうした。



旦那が一番焦ってる。



落ち着け・・・。



しゅんちは物も言わずササッと着替え、車にタカコを乗せた。
かなり痛みが強くなっているらしく、苦しそうである。


動揺は禁物だ・・・


落ち着け自分・・・!


大丈夫だ・・・。


しゅんちは無口のまま冷静沈着を装い運転するのだった。
そして、病院に到着した。
ここで、陣痛の進行が遅いと自宅待機で帰らされる事もある。
しかし、状況的に結構進行しているらしく入院が許可されとりあえず第一関門クリアである。

2人は病室に案内され、相変わらず苦しそうにうずくまるタカコ。
病院に来たからといって痛みがなくなるわけじゃない。
むしろ更に自体は急変していくのだ。
しゅんちは胸が詰まる思いであった。

そして、2時間近く経過した。

タカコは相変わらず定期的に苦しそうである。
しゅんちは両親学級を思い出し腰をさすった。

更に2時間経過した。

助産師「そろそろですね・・・。では陣痛室に移動しましょう。」

陣痛室は分娩室の横にあり、分娩間近の妊婦の控え室である。
畳が敷かれ軽くくつろげそうな雰囲気。

助産師「もう少しですからね。がんばってください。」

更に1時間経過・・・

痛みの間隔が短くなり、かなり進行してきたように思えた。

助産師「じゃあ、分娩室に移りましょう。」

ついに・・・

この時がやってきたのか・・・。

分娩室に行くということは出産はもう間近という事である。
しゅんちは心臓の鼓動が高鳴り、尻の穴がキューッとすぼまるような気持ちであった。

・・分娩室はまるで手術室のような雰囲気であった。
様々な医療器具が並び今までの部屋とは比べ物にならない緊張感があった。
タカコは電動の上下するベットに寝かされた。
この後この場所でもの凄い事が起きるという物々しさであった。

助産師「もう少しがんばりましょうね。旦那さんもさすってあげて下さいね。」



がんばれ・・・



もう少しだ・・・



て、いうか一体いつ生まれるんだ・・・



こんなに苦しそうなのに・・・



いつまで続くんだ・・・



様子を見に来る助産師。

助産師「どうですか・・・?まだみたいですね。がんばって下さい。」


まだかいぃぃ・・・。


分娩室に入ってもうすぐ1時間経とうとしていた。

助産師「タカコさーん・・・お食事なんてできます?」


こ、こんな時にっ!?


タカ「む・・・む、無理そうです・・・。」


そ、そりゃそうだろ。


助産婦「あら・・・じゃあ、旦那さん食べてもらっていいかしら?」

しゅ「え・・・お、俺ですか!?


こ、こんな状況で・・・


しかも


こんなところで食えるかー!!



・・・と思いつつも







見事、完食。



タカ「お、おいしかった・・・?」

しゅ「お、おう。うまかった。」

タカ「よ・・よかったね・・・。」

朝早くから起きてて、猛烈な空腹だったしゅんち。
背に腹は変えられないのであった。


そして更に30分後・・・


助産婦「どうかなー?んん!?これは・・・」

しゅ「き、来ました?」

助産婦「よし!いけそうよ!

しゅ「つ、ついに来たか・・・。」

いよいよ出産に入るらしい。
しゅんちの役目もここで終了である。


あとは天に祈るだけだ・・・!


しゅんちは分娩室を後にしようと立ち上がった。

助産婦「旦那さんはそちらに掛けてあるエプロン付けて下さい!」

しゅ「へ?」

助産婦「9時45分 分娩開始します!」


うぇえええええぇぇええ〜〜〜〜!!?


タカ「あ、あれ・・・だ、大丈夫なの?」


今一番大丈夫じゃない人に大丈夫?と聞かれて


大丈夫じゃないとはとても言えない。


しゅ「だ、大丈夫さっ!よし!がんばろう!」



しゅんち立会い出産決定。



完全に足がすくんだ状態で声を掛け続けるしゅんち。
絶叫マシーンに乗るつもりもなく、ただ見送りに来たつもりが乗せられてしまったような感じである。
まさに心の中大絶叫である。


うわぁああぁあああぁああぁあ〜〜〜〜〜〜



・・・


・・・



んぎゃぁ〜・・・


んぎゃぁ〜んぎゃぁ〜〜・・・


助産婦「元気なお嬢ちゃんですよ〜!」

しゅ「お、女ですか!?」

助産婦「はい!元気な女の子ですよ!」


う、生まれた・・・。



10時02分 女児誕生。


へその緒を切り、早速母親に抱っこされる赤ちゃん。

タカ「わぁ・・・嬉しい・・・!」

タカコは涙を流しながら産まれたばかりの赤ちゃんを抱き上げる。
しゅんちは感極まったのかショックだったのか固まってあまり動けなかった。
とりあえず、思いついた言葉で声をかける。

しゅ「お、おめでとう!」

タカ「ありがとう!しゅんちゃんのおかげだよ!」

・・・

そして、一旦しゅんちは分娩室の外へ出て1人部屋に戻った。
階段を降りる途中、なんだかわからない気持ちがこみ上げた。



タカコの言葉・・・



子供の誕生・・・



家族の絆・・・



今まで味わった事のない感情だった。
そして思わず涙がこぼれるしゅんちであった。

・・しばらくして病室にタカコは戻った。
産後の経過も良いらしく、まるで健常人のように元気だった。

その後、しゅんちはあちこちに連絡をした。
親戚友人同僚からのお祝いメールで一日返信メールで携帯が鳴りっぱなしだった。

そして一旦アパートに帰って仮眠した。
その後は入院の支度をして病院に行ったりとその日は色々忙しく過ごした。

そして、タカコとゆっくり話をしていると面会時間も過ぎてしまった。
辺りはすっかり暗くなっていた。

こうしてしゅんちは1人帰路についた。
帰り道、お祝いにと小僧寿しに寄るのだった。

店員「あ〜お客さん。もうおしまいなんですよね。」

しゅ「あっ・・・売り切れですか?」

店員「弁当2個しかないのよ。」

しゅ「あ、じゃあその1個買いますよ。」

会計をするおばちゃん。

店員「お兄さん。もう1個持っていき。」

しゅ「え・・・いいんですか!?」

店員「いいよいいよ。」

しゅ「あ、ありがとうございます!」

今日はまるで街中で女児誕生を祝福してくれているようだった。
しゅんちはなんだかわからない幸せを感じながらアパートへと帰った。

そして1人自宅でひっそりと祝杯を上げたのだった。


お父さん・・・か。


最初は不安だったのだが産まれてしまえばなんだか不安も吹き飛んでしまった。
今はもう早く3人で一緒に暮らしたいという気持ちだけである。
案ずるより産むが易しとはこのことだと身をもって実感するしゅんちであった。


後日・・・


その子には「カホ」と名づけた。



しゅんちベビー誕生の瞬間である。


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