shunchi極楽日記


act 356「WBC」 

ある朝、しゅんちは塩尻駅へ人を迎えに行った。
メーカーの技術者をお客へ連れて行く仕事である。

前日のメーカーからのメール・・・


「明日、9:30塩尻着のスーパーあずさで向かわせます。
弊社、倉(ちゃん)という者がお伺いします。
着いたら携帯へ電話させていただきます。」


倉ちゃん・・・。


仕事のメールであだ名で連絡してくるなんて、なんてフレンドリーなんだろうか。
やっぱり会った時には初対面で倉ちゃんと呼ばなくてはいけないのだろうか・・・。

・・時刻は9:30になり、しゅんちの携帯が鳴り響く。
フト、駅前を見るとちょうど携帯で電話している人がいる。
恐らくあの人が倉ちゃんさんだろう。
生真面目そうな雰囲気の方でとてもちゃん付けでは呼べそうな雰囲気はない。

とりあえずしゅんちは倉ちゃんさんに駆け寄る。

しゅ「あ・・・どうも!○○社のしゅんちです。」

倉「あ・・・ああ、ドウモ。」




か・・・カタカナ?




しゅ「じゃ、じゃあ寒いので早速車へどうぞ。」

倉「すみマセン・・・。」

しゅんちは車に乗り込むと早速名刺交換を試みた。

しゅ「どうもはじめましてー。」

倉「は、はじメマシテ・・・私、チャンと言います。」



ちゃん?




倉と書いて(ちゃん)・・・。




倉(ちゃん)。



そういうことか。



しゅんちは慣れない異国の方と気まずい雰囲気で車を走らせるのだった。
はて中国の方だろうか。

・・・・


しゅ「あ、あの・・・長野県は初めてですか?」

倉「え?ハイ??」


し、しまった・・・


長野県知らなかったか!?


しゅ「えっと・・・冬のオリンピックやったところなんですよ。長野って。」

倉「え・・・・ああ!ハイハイ。トウキOlympicですね。」


むむ・・・


英語の発音はやたらと良い・・・。


倉「・・私、韓国人ナンですね。」

しゅ「あっ・・・そうなんですか!」

しゅんちの挙動に気づいたのか自らに素性を明かす倉さん。

倉「アメリカにリュ−ガクしてまして、トウキョウに来て日本人の奥さんと結婚シタンデス。」

しゅ「ああ!そうだったんですか!しかし日本語上手ですねぇ。」

倉「敬語とかアンマリわかんないですケドね。」

しゅ「あはは そうですか。」

思えは韓国人と会話したのは初めてである。




ん・・・!




韓国!?



そういえば今日はWBCで日韓の大事な一戦が間もなく行われる事になっている。



しゅ「あーそういえ・・・」



いや、まてよ。

しゅんちは言いかけてとっさに言葉を止めた。

韓国人ってWBC熱はどんなもんなんだろうか・・・。

ちなみにしゅんちは野球はあまり詳しくない。
WBCは一応、興味はあるものの野球ファンに比べたらたいした熱ではない。
ところが韓国では国民一人一人が熱狂的な野球ファンだったりして。
日本に勝つことを国を挙げて熱望していたとしたら・・・。

一方しゅんちと言えばそんなに熱く語れるほどでもない。
日本の国民性の低さを露呈してしまわないだろうか・・・。

あとしゅんちの偏見かもしれないが、韓国人はどうも負けず嫌いのような気がする。
政治的に言えば諸問題もあったりとあまり仲が良い国とも言えないとも新聞で斜め読みしたような・・・。
下手に話題を振ったりしたら・・・





「今日の試合は韓国が必ず勝チマス。日本には絶対にマケたくありません。」





とか言い出したら



なんと気まずい事か。



さまざまな心配がよぎったしゅんち。

しゅ「そ、そういえば・・・に、日本の食事には慣れなました?」



話題転換。



倉「そうデスネ・・・似たような食事がオオイので平気です。」

しゅ「ああ〜そうか。お箸文化ですもんね。」

倉「ハイ??」

しゅ「ああ・・・えーっと・・・お箸使いますもんね。日本も韓国も。」

倉「ああそうデスネ。」


ちょいちょい話が通じない。


こうして差しさわりのない会話を展開しながら目的の会社に到着し、倉さんをお客に紹介する。
お客さんはしゅんちより若い人である。

お客さんは倉さんの片言の日本語にすぐ気づいた。

客「チャンさんは・・・どちらのお国の方で?」

倉「ああ、私は韓国デス。」

客「ああ!そうなんですか!」

倉「ハイ。よろしくお願いします。」

客「今日ちょうどWBCで試合しますよね!韓国と日本!」




なんて無邪気なんだ。



倉「そうですね。楽しみです。」

客「どちらを応援するんです?」

しゅ「(ヒヤヒヤ・・・)」

倉「ヤッパリ私は韓国ですね。奥さんは日本デスが。」

客「あーそうなんですか。」

倉「子供はドッチ応援したらイイか迷ってマス。」

客「じゃあ、昨日は韓国が勝ったので奥さん機嫌悪かったでしょ?」

倉「ハイ?」

客「奥さんの機嫌。」

倉「ああ・・・ハイハイ。」


今のは通じてないな。


そして仕事も終わり帰りも倉さんを駅へ送りに行った。
一通りの会話を終えたしゅんちは話題も尽き、無言になってしまった。
なんとなく息が詰まりそうだったので、場を和まそうとラジオをつける。



ザザ・・



3−1!



日本!



日本リードですっ!

僅かですが日本に世界一への道が見えてきました!


しゅ「・・・。」

倉「・・・。」


日本世界一まであとアウトカウント6つ!


霧がうっすらと・・・!


栄光への道がうっすら晴れてきました!


霧の向こうには光がっ!


世界一へのぉおっ!!


世界一への道がぁああああ!!




なんと気まずい事か。



しゅんちの日韓戦は塩尻駅まで続くのだった・・・。


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