shunchi極楽日記


act 366「おもてなしの心」

しゅんちは納品をする為に得意先に行った。
「納品」とは注文を頂いた商品を届けるというごく簡単な仕事である。

受付で事務員のおばちゃんに物品を渡すしゅんち。
伝票に受領印を押してもらい納品終了である。

軽く挨拶をし、得意先を出ようとした瞬間、外回りを終えた社長にバッタリと出くわした。


社長「ややっ しゅんちさんじゃない。」


しゅんちはこの社長に結構気に入られているようなのである。

社長「まあそんなに焦らなくて帰らなくてもいいじゃない。」

しゅんち「いやぁ〜あはは・・・」

社長「まあ、ちょっとお茶でも飲んでってよ。」

しゅ「いやいや、そんなお構いなく・・・。」

社長「まあまあ」

しゅんちは半ば強引に応接に案内されてしまうのだった。


しゅんちは営業マンのくせに、用事も無くその場にとどまる事が大の苦手である。
特に年配の方との世間話が苦手で、会話が続かないのではないかと心配なのである。

そんな心配をよそに正面に座った社長は気さくに話し始めた。

社長「うちが出すお茶はねぇ〜。いいお茶なんだよ。」

しゅ「あっ そうなんですか。」

社長「いつも何気なく飲んでたでしょ?」



ギクッ



しゅ「い、いや・・・なんとなくおいしいかなーとは思ってましたよ。」

社長「わははは そうかい!」

社長は上機嫌である。
外出先で何か良い事があったのだろうか。

社長「あのお茶はねぇ、ある知り合いのところから特別に取り寄せてる物でね。」

しゅ「ほほう・・・。」

社長「あの濃い緑色が高級感あるんだよな。わはは」

しゅ「あーそうですよね。確かに良い色だった気がしますよ。」

記憶のかなたにお茶の色のイメージが浮かぶ。
確かに濃いエメラルドグリーンの綺麗な色のお茶だった。
てっきり湯のみの色が透けて見えていただけかと思ってたのだが。
味も・・・そういえば確かにうまかったような気がしてきた。

社長「うちの会社はこの通り小さいでしょ?」

しゅ「い、いやいや〜そんな事は」

社長「社員の給料を払うだけで精一杯なわけだ。」

しゅ「そうなんですか・・・?」

社長「そんな小さい貧乏会社でもさ、お茶だけはいい物を出したい・・ってのが私のポリシーでね。」

しゅ「へ〜・・・。」

社長はこの不景気でとても経営が楽なわけではないらしい。
経費削減が強く叫ばれるご時世である。
なるべく余計な経費は削減しておきたいというのがどこの経営者も同じ考えだろう。

しかし、お客へのおもてなしだけはケチりたくない。
日本の美学である「おもてなしの心」だけは大事にしたいと話してくれた。
また1つ勉強になったしゅんちであった。


事務員「失礼しまーす。」


事務員さんが飲み物を運んできた。


事務員「どうぞ。」


しゅ「あっ すみません。」


出てきた物は




コーヒー。






社長「あ・・・今日はコーヒーだったな。すまなかったね。わはは」







しかもインスタント。(安)




しゅ「い、いやいや ちょうどコーヒーが飲みたかったところで・・・」

社長「そうかい?わはは・・・」

しゅ「はいはい!あはは・・・」

社長「インスタントもたまに飲むとうまいんだよな。わはは」

しゅ「そうですよね!わはは」


・・・



おもてなしの心・・・


気持ちだけ受け取っておきました。


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