shunchi極楽日記


act 370「不穏な電話」 

・・・仕事も佳境に入ってきた18時頃。
しゅんちは一心不乱にキーボードを叩いていた。

その時、しゅんちの携帯が鳴り響いた。
相手は妻タカコである。

いつもは用事があればメール連絡がほとんどだ。
わざわざ電話してくるのは珍しい事である。

何かあったのだろうか・・・?


しゅ「もしもしどした?」

タカ「あ、ごめん。今平気・・・?」

しゅ「うん。大丈夫だけど・・・どした?」



声のトーンからして何かよからぬ知らせだろうか・・・。


タカ「カホがね・・・。」


カホは2歳の娘である。


しゅ「か、カホがどうした!?」

タカ「熱を出したの。」

しゅ「え!?何度?」


タカ「38.6度。」


しゅ「ま、マジで!?」

かなりの高熱である。
嫌な予感が走るしゅんち。


しゅ「と、とにかく早く帰る!」


早めに仕事を切り上げ、急いで自宅に帰るしゅんち。
なんとなくよくない予感が心に渦巻いていた。

急いでドアを開けるしゅんち。


しゅ「た、ただいま!!カホ大丈夫か!?」





カホ「とおおおおたーーーーーん♪」




え。




カホ「とぉーたん♪とぉーたん♪とぉーたん♪」


カホは両手を上下させながらぐるぐる回っている。
まるでどこかの民族の踊りのように「お帰りダンス」を披露するのであった。


タカ「そうなんだよね・・・。元気はあるみたいなの。」

しゅ「・・・熱は?」

タカ「今も測ったけど、38度くらいかな・・・。」

明日から3連休である。
東京方面に出掛ける予定なのである。


タカ「明日からの事もあるしさ、どうしようかなーって思って・・・。」

しゅ「ん〜〜・・・大事な時だし一応病院連れてってみるか・・・。」


こうして、元気な(?)カホを連れて病院に向かうしゅんちであった。

病院に着くとお母さんに抱かれぐったりしている子供達で溢れていた。


受付「こちらに患者さんのお名前をお書きください。」


カホ「あーーー!あんぱんちー!」


タッタッタッタター

壁に貼られたアンパンマンのお絵かきを発見し走り出すカホ。

カホ「とーーたん!あぱっ あぱちー!」

カホはアンパンマンと言えずあんぱんちーと言うのである。


しゅ「か、カホ!お、おとなしくしてなさい!」

急いで名前を書いてカホを押さえつけなくては・・・。

しゅんちは汚い字で名前を書きなぐってカホ回収に向かった。


受付「あら?患者さんは・・・お、お父様でしょうか?」



ん?



自分の名前書いちゃった。


しゅ「す、すいません・・・。具合悪いのはあの子です・・・。」

受付「え・・・!そ、そうですか。」

明らかに「本当に?」というようなリアクションである。

カホ「とぉおおおたーーーーん!」

しゅ「はいはい!待ってなさい!」

カホは待合室を縦横無尽に走り回っている。
名前を書き終えたしゅんちはカホを取り押さえに向かうのであった。

なんとかソファに座らせると、あちこちキョロキョロするカホ。


カホ「あーー!とぉーたん!コレ!コレェ!ほんっ!」


本棚に置いてある絵本を見つけ絵本読め読め攻撃を仕掛けてくるカホ。
仕方なく、アンパンマン絵本を読んであげるしゅんち。


・・・


カホ「あぱっ!アパチー!」

しゅ「そうだねぇ。アンパンチでバイキンマンお帰りになったねぇ。」

カホ「バイバイチ〜ン」

か行がうまく発音できない2歳児カホ。

看護師「あ、お父様。お子様のお熱測ってもらっていいですか?」

カホ「おとーーーたん!!あぱーちぃー!ほんっ!」

カホは相変わらず絵本を読め読め攻撃を繰り出す。


しゅ「カホ!お熱を測らなきゃダメなの!」

カホ「あぱーちーーー!!」

しゅ「大人しくしなさい!」

カホ「うぇぇぇぇ〜〜〜〜ん!!」


わがままを言い泣き出すカホ。

そのとき、玄関には具合悪そうな子供を抱えたお母さんが入ってきた。
子供は具合が悪いのか泣き叫んでいた。



ごめんなさい。



うちの子も泣いてますが



具合悪くて泣いてるんじゃ無いんです。




アンパンマン読んで欲しくて泣いてるんです(泣)



ますますこの場所にふさわしくないんじゃないかと思えて来た・・・。


もっと具合が悪い子もいるだろうに、そんな子達に紛れてよかったんだろうか・・・。


しゅんちは腕に挟んだ体温計を見つめる。


もし、これで平熱だとしたら・・・


どんだけお騒がせ親子だと思われるだろうか・・・。




・・・・。



あが・・・




上がれ・・・




上がってくれ・・・




もうちょっと熱上がってくれ・・・。



とりあえず8度台は無いと恥ずかしい・・・




なんとも不謹慎な親である。



38.2℃



よおおおおし!!カホやったぞ!!具合悪い権利を獲得だ!!




何をどうしたいのか本来の目的を忘れるしゅんちであった。



こうして胸を張って診察室に入るしゅんち親子。

カホは相変わらず元気で、診察室のあちこちに張られたアンパンマンの標語を指差して反応する。


カホ「アパーーチーーー!」


医者「・・・。」

看護師「・・・。」


医者「で、どうされました?」

しゅ「はい・・・。熱が出まして・・・。」

医者「げ、元気そうですね。」

しゅ「はい・・・。」

医者「ぐったりした感じは・・・」

カホ「とーーーたん!アパチー!!」

医者「・・・無さそうですね。」

医者「食欲は?」

しゅ「めちゃ食べますねぇ・・・。」

医者「吐いたりは?」

しゅ「無いですね・・・。」

医者「ちょっと呼吸を聞かせて下さいね。」

そういうと遊びたくて暴れるカホに聴診器を当てていく医者。


医者「・・・・。」


しゅ「(ごくり)・・・。」


医者「ただの風邪ですね。」



終了。チーン



カホ「おとーたん!アパチー!コレェ!」

しゅ「か、帰るぞカホ!」

カホ「コッチぃ〜〜!おとーーたーーーん!」

こうして緊急医を後にするしゅんち親子であった。
カホはその後いつもどおりに遊び、食べ、いつものように寝てくれた。

子供の熱は上がりやすく、それに惑わされてはいけない事を肌で学んだしゅんちであった。

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