shunchi四国漫遊記


PM 2:30〜

讃岐うどんをたらふく食べた一行は膨れたお腹を抱え高知県へと向かう。
今夜は高知市内の安いホテルに泊まる予定である。

昨日父に「明日はあまり時間に余裕がない」と危うく讃岐うどんを大幅カットされそうになったのだが結局時間に余裕ができ、予定を前倒しして坂本竜馬のゆかりの地「桂浜」に向かうことになった。


「もうすぐ着くのに渋滞だ・・・ひぃぃ〜」

道中、渋滞に見舞われ眠気に襲われるしゅんち。
何か暇つぶしをと母のCDケースに手をかける。

ラインナップは長渕剛、大塚博道、五輪真弓、荒井由美・・・

しゅんちが幼少の頃に無理矢理聞かされてきたラインナップがズラリ勢ぞろい。
荒井由美がユーミンだってことを現代っ子は果たして知っているだろうか。
まさに団塊の世代が好む錚々(そうそう)たる顔ぶれである。

しゅんちは早速熱唱しようと長渕剛をチョイス。
「私は苦手」というタカコの好みを軽くスルーし、あまり似てないモノマネをしながらろくなもんじゃねえ〜と歌いながら現地に向かうのであった。


「闘犬は売ってなさそう」

かなりの渋滞を越えようやく桂浜に到着。

「桂浜」とは太平洋面した海岸で、月の名所と呼ばれ有名な歌人にも歌われた場所なのである。
岬の上には坂本竜馬の銅像が立てられていて、坂本竜馬がこの海岸から海を眺め外国への思いを馳せたとも言われている。
他に水族館や土佐犬の闘犬場などがありと見所も多く、お土産屋に土佐犬の絵が描かれてるのが印象的であった。


「ここの景色が有名なんだってさ」

母「私、絵を描くわ!」

そういい手ごろなベンチに腰を掛け、スケッチブックを広げる母。
多趣味な母は最近「水彩画教室」に通い始めたらしい。
いつも「忙しくて時間が無い」と言ってる割には新たに何かを始める時間はあるらしい。

しゅんちも絵を書くのは好きなので一枚破ってもらい、隣で一緒に書くことにした。
タカコは2人の写生を覗き込みながら過ごし、父はブラブラと何かを求め旅立って行った。


「松が風情を感じますね〜」

鉛筆で下書きを完成させ、色付けはまた後日にしようということでデジカメで風景を撮影した。
だったら最初から撮影だけしとけばよかったのでは・・・?と思いながらも特に口にはせずスケッチブックを閉じた。
父はどこに行っていたのかは不明だがフラフラと戻ってきた。


「竜馬さまぁーー」

そして一行は龍頭岬にある坂本竜馬像の元へ歩いて行ってみた。
しゅんちの坂本竜馬の知識が乏しく、日本で初めて新婚旅行をした人という事と金八先生が敬愛していたぐらいしか知らず、恩恵を感じれずに悔しい思いをした。
帰ったらいつか本を読んでみようと坂本竜馬像と一緒に太平洋を眺め思いを馳せるのだった。


「白い皮も一緒にミキサーに投入」

帰りがけにお土産屋に寄り、小夏ジュースを飲んでみることに。
それにしてもこちらには聞いた事のない柑橘類が多い。
文旦、小夏、八朔(はっさく)・・・
柑橘系が苦手なしゅんちを尻目に狂喜する柑橘系好きのタカコであった。

おばちゃんが目の前で手際よく皮をむきミキサーに突っ込み完成。
ゆずのようなレモンのような甘酸っぱい味がした。

こうして一行は桂浜を後にした。


PM7:00〜

今夜泊まるホテルは高知市内にある「コーズスタイル」。
ビジネスホテルなので部屋は狭いものの小奇麗なホテルであった。
部屋に風呂(浴槽)が無く、電話ボックスのようなシャワー室だけがあるアメリカンスタイルのホテルとのこと。


「高知市内にある観光スポット播磨屋橋」

部屋で軽く仮眠をした後、夜の宴会場を求め高知市内へと繰り出すことにした。
ホテルのお兄さんに聞くと「ひろめ市場(いちば)」というところがオススメらしい。

さて、ひろめ市場とはどんな飲み屋なのだろうか・・・。

ブラブラと高知市街の様子を伺いながら20分くらい歩き、ひろめ市場に到着。


「競なんかやってそうな雰囲気」

ひろめ市場という名の通り、飲み屋というよりも市場という感じ。


「おっと左に信州そば屋があるじゃん」

市場の中には飲食系の他におみやげ屋や衣料品などのお店もひしめき合っていた。


「めちゃくちゃ混んでるよ」

そして中央はジャスコなんかにあるフードコートのような感じで、中央にテーブルが並んでいた。
屋台風の露店で買った物を中央のフリースペースで飲み食いするシステムのようである。
他にもちゃんとした店舗の居酒屋もあるようでどこで食べようか迷わせた。
できればフリースペースで色んな物を買ってきて食べてみたかったが、あいにく席が全く空いておらず仕方なくお店に入ることにした。


「逆さにぶら下がった日本酒達」

ちょうど席が空いていたので「土佐蔵社中」という店に飛び込んだ。
土佐の地酒が楽しめるお店らしい。
とりあえず土佐名物のかつおのたたきが食べられる店らしいのでまあ無難といったところだろう。


「でた!名物かつおのたたき」

早速生ビールを注文し、名物であるかつおのたたきを頼む。
高知県はかつおが有名なのである。

食べてみるといつも食べていたカツオの臭みを全く感じない。
身も引き締まっており、もっちりとした歯ごたえと共にカツオの旨みが口の中に広がった。
さすがに土佐名物といった感じであった。

父「そういや、かつおの塩たたきってのもあるらしいな。」

しゅ「ああ、さっき俺もみたよ。でもこの店にはないみたいだねぇ。」

母「あら〜残念ね・・・じゃあはしごしてもいいわよ!」

しゅ「そうだね!ここで軽く食べて次の店に行こう!」

皆の意見が一致し、軽く食べながらあちこちの店に行こうと決めたのだった。


女の子「すみませ〜ん・・・ここの席空いてますか?」

店員「あーどうぞ!」

若いカップルがしゅんち達一行の後ろの席に座った。

父「・・・おい。しゅんち。」

後ろカップルの様子を見た父が小声で話しかけてきた。

しゅ「え・・・?どした?」

父「ちょっと後ろ見てみろ・・・。」

しゅ「なになに・・・?」

ゆっくりとさりげなく後ろを振り返ると


テーブルには違う店の料理。


しゅ「あれ・・・?ここって持ち込みOKなの?」

母「そういえば、さっきあっちに座った人も他の店から何か持ってきてたわよ・・・。」

しゅ「マ、マジで!?」

そこでしゅんちは店員に持ち込みOKなのか聞いてみることにした。
すると当然のごとくの返事で大丈夫との回答。

しゅ「うわ!じゃ、じゃあさ、俺なんか買ってくるわ!タカコ行こうぜ!」

興奮気味に席を立つしゅんち。

母「私餃子食べたい!」

しゅ「OK!じゃあ、それも買ってくるわ!」

こうして店の外を飛び出し、タカコと2人で露店へと向かう。

まずは餃子店に向かうしゅんち達。
確か広場の北のほうにあったはずである。

人ごみを避けながら餃子屋「安兵衛」に到着。
高知では有名な餃子屋らしい。
とりあえず1人前注文することにした。

店員「すみません。今、ちょうど焼き始めたところで15分ほどお時間かかちゃいますが・・・。」

しゅ「うわあ・・・15分か・・・。」

タカコ「後で取りに来ようか・・・?」

店員「出来ましたらお届けしますが?どちらにいらっしゃいますか?」

どうやらお届けまでしてくれるらしい。

しゅ「え・・・あ・・・あっちの方ですね。」

さすがに他のお店の中で食べてるとは言いにくい。

店員「広場ですか?」

他の店で食べてるなんて言ったら断られやしないだろうか・・・。

しゅ「いやー・・・あのー・・・えーと・・・」


タカコ「黒いのれんのお店です・・・。」






正直者。



店員「あー蔵社中さんですね。はい!わかりました!この札をお持ち下さい!」


「こんな札」

とりあえず席に戻る2人。
札を渡されたのでテーブルに恐る恐る置いてみる。

しゅ「こ、こんなの置いといていいんかねぇ・・・。」

他のお店でこんな札を立てていて大丈夫だろうかと不安になるしゅんち。

母「ところで・・・さっきからなんだか変なのよ。」

しゅ「な、なにが?」

母「あなた達が買い物してた時にね・・・」

しゅ「うん?なにかあったの?」

母「後ろに座っていたカップルいたでしょ?」

しゅ「ああ、持ち込みしてたカップル?」

母「あの後、何も注文せずにそのまま帰っちゃったのよ。」

しゅ「え!?飲み物とかも?」

父「トイレかと思ったんだけどな、二人とも全然帰ってこないんだよな。」

しゅ「ふむ・・・?」

母「更に驚きなのがね、この店の店員がね・・・」

しゅ「う、うん。」



母「置いてった食器を普通に片付けたのよ。」



しゅ「うええええええ!!?」





ど・・・・



どうなってんだここは・・・???


と、その時・・・

店員「餃子お待たせしましたー!」

餃子が違和感無く運ばれてきた。
他店の店員が自然に入店して置いていった。
その光景に一行はしばらく固まる。


・・・。


しゅ「ひょっとして・・・」

母「う、うん・・・」

しゅ「この市場は


フリーテリトリー(領域)なんじゃないか?」



例えるならば・・・



マクドナルドの店内に



モスバーガーを持ち込み、



スタバキャラメルマキアートを飲みながら、



食後にサーティーワンアイスを食べていても



OKなのである。



しゅ「す、すげええ!!これは画期的!!」

父「うははは!こりゃ、すごいな!」

しゅ「え、え・・じゃ、じゃあさ、塩たたきとタコ焼きとさっき見かけたおしゃれなバーでカクテル買ってくるわ!」

母「わ、私はお惣菜コーナーでほうれん草のおひたしと地物野菜の煮物を買ってくるわ!」

しゅ「ついでに入り口にあった店で鯛茶漬けを買ってくる!」


「ぐちゃ」

色々やっちゃいました。



父「いやぁ・・・ここの文化はすごいな。」

母「ほんと、すごいわね。食器とか洗った後、どうやって仕分けしてんのかしら・・・。」

南国というところは暖かい地域だからなのか心が開放的なのだろうか。
自分の敷地には他人は一歩も入らせないという閉鎖的な長野県人には考えられない文化である。
父は長野県議会の方々が研修旅行に来ればよいと風刺的なコメントをしていた。


こうして一行はこのシステムに驚愕しながら、開放的な気持ちでひろめ市場を楽しんだ。
しゅんちもあまりの楽しさに酒がどんどん進むのであった。


そして高知の夜がお祭り騒ぎの気分のまま更けてゆくのだった・・・。


つづく・・・


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